原作設定(補完)
□その23
7ページ/20ページ
#224
作成:2016/08/16
真選組屯所。
食堂で朝食を取っていた土方に、ドタドタと足早にやってきた近藤が言った。
「トシっ、今日休んでいいぞっ」
「あ?」
「このあいだ非番代わってもらっただろ? だから今日は休んでくれ、な?」
土方としては休日返上で働いたつもりだったので代休を取るつもりはなかったのだが、近藤は気にしていたらしい。
そんなことよりも勤務中に屯所を抜け出すのを止めてくれないかな、と思いつつ、ありがたく受けることにした。
「……分かった。そうさせてもらうよ」
「おうっ」
『急に休みになると、心の準備がないだけに楽しさ半減って感じがするよなぁ』
副長室に戻ってゴロゴロしながらテレビを見たり、溜まったマガジンなどを読んでいたがすぐに飽きた。
携帯をチラリと見る。
非番を知らせれば喜ぶヤツが居るが、会うのはいつも夜だったので午前中から電話をするのは躊躇われた。
けれど、非番を近藤と代わったせいで約束をドタキャンしたのはずっと気になっていたのだ。
「……暇かな……暇だよな……」
そう決め付けて携帯を手に取ると、万事屋の電話番号を押した。
「…はい、万事屋銀ちゃんです…」
電話に出たのは新八だったが、その声はなんとなく元気が無い。
「土方だけど……大将いるか?」
「あ、こんにちは。いますよ。銀さ〜ん、電話ですよ」
「あ〜〜、誰だ〜〜」
「土方さんです」
やはり元気がない感じの声の銀時が、土方の名前を聞いたとたんドタンガタンと何かにぶつかる音をさせながら、受話器に飛びついたのが目に浮かぶ。
「はいっ!」
「…ふっ……てめー、今、暇か?」
「暇ですぅぅ!」
時計を見ると昼ちょっと前だったので、食事を“誘う口実”にしてみたら、
「飯でも食いに行かないか?もう済んだか?」
「飯っ!?まだです、行きますっ!」
「じゃあ…」
思っていた以上の食いつきだったが、理由はすぐに分かった。
受話器の向こうで神楽と新八が大騒ぎしている。
「ズルイ!ズルイアル!!銀ちゃんばっかりっ!!」
「そうですよっ!仕事が全然なくて給料どころか毎日の食事すらままならないのにっ!!」
「おまえらっ、しぃぃぃっ!!土方に聞えるだろうがっ!!」
丸聞こえだし、そんなことは今更見栄を張って土方に隠すようなことでもない。
どうやら元気がない理由は空腹のせいらしいので、土方はしかたねーなと笑いながら言ってやった。
「おい。二人とも連れて来い」
「や、でも…」
「空腹のガキ放って飯なんか食えるかよ」
「……分かった。いいってよ」
「キャッホォォウウウ!!」
「ありがとうございますっ、土方さんっ」
喜ぶ新八と神楽の声の合間から、銀時ががっかりして深い溜め息をつくのが聞えた。
コブ付きデートになってしまったのだから気持ちは分からなくもないが、自業自得だと土方はほくそ笑む。
待ち合わせの場所にやってきた新八と神楽は、これから食事にありつけると思っているせいか割と元気そうだった。
「じゃあ、どうするかな」
「食べ放題!ソフトクリーム食べれるとこっ!」
始めから決めていたらしく神楽は意気揚々とそう叫び、土方もそんなものでいいならと思ったのに、何故か銀時と新八は微妙な面持ち。
「あ〜…でも、近くのはもう無理じゃないかなぁ」
「?」
無理の意味が分からずにいる土方に、新八が半笑いで教えてくれた。
「神楽ちゃんが大食い選手権並みに食べるんで断られちゃうんですよ」
「断られる?」
「“出禁”ってヤツだな」
「食べ放題で食べ放題して何が悪いアルか!」
「いやー、おめーが腹いっぱい食ったら出入り禁止にもしたくなるだろ」
「ははは。まあ、僕たちも食いだめしようとしちゃうんで、三人ですごいことになっちゃうんですよ」
ピラニアの群れのように、並べられた料理たちが食べつくされている様子が想像できた。
それを聞いて何か考えていた土方が、
「……ま、なんとかなるだろ」
と言って、戸惑う三人を連れて近くの食べ放題の店に向かった。
案の定、銀時たちの姿を店内から見つけた店員たちがざわついている。
それを見た土方が、銀時たちを待たせて先に中に入ると店員に何か交渉しているようだった。
.