原作設定(補完)

□その22
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#214

作成:2016/07/26




薄暗い部屋の中で、軋むベッドの音とお互いの熱い息遣いだけが聞える中に、鳴り響く携帯の着信音。

思わず動きを止めてしまったのも悪かったかもしれないが、土方は躊躇わずにベッドサイドに置いた携帯を取る。

「……はい、土方」

銀時は土方の胸の上に額をつけて黙っていたが、

「……分かった。すぐ戻る……」

という言葉を聞いて、その体をぎゅーっと抱き締めた。

行かせたくないと思っただけなのに、それは土方のお気に召さなかったらしい。

銀時に呼びかける声が少し苛立っていた。

「万事屋」

「…………」

「…おいっ」

諦めた銀時はパッと体を離し、ベッドにごろりと寝転がる。

そんな銀時に構わず土方はそのままベッドを降り、脱いだばかりの着物を着込んだ。

そのまま帰ろうとしたのだが、謝っていないことに気付いて振り返った。

急な仕事が入るのは仕方ないし、それに対して拗ねる銀時に腹が立ちはしたものの、自分が悪いというのも確かなのだから素直に謝罪はしておこうと思ったのに、

「……万事屋……」

「いってらっさ〜い」

顔は上げず手だけをピラピラさせてそう言われた。

いつものことだし、あとで甘味でも奢ってやればいいだろうという気持ちで、

「………後で電話する」

とだけ言って部屋を出た。




翌朝……実際にはもう昼近かったが、出動が片付いて自室に戻った土方が万事屋に電話すると、銀時は留守だった。

『仕事でちょっと遠くへ行ったんです。しばらく帰れないと思うんですけど……』

電話に出た新八にそう言われ、昨夜はそんなこと言ってなかったと思い訊ねてみたら、

『渋ってたのに急に行くと言いだして……』

ということらしい。

電話を切ってから、昨日のことが原因か?、と苛立ちがぶりかえしてきた。

そんなに怒ってるんだったらあの場で言えばいいものを黙って遠出するとか陰険じゃねえか……とは言えない。

ドタキャン、連絡なし、昨夜のような早退なんて、土方のほうがずっと多いのだから。

今回は仕方ないかと許すことにした。

のに、日を置いて何度か連絡するが帰宅せず、一週間を過ぎたころには新八たちに余計な気を使わせてしまうので、“帰ったら屯所に来い”と伝言を頼んでおいた。




二週間後。

深夜まで副長室で書類整理をしていたら、庭側の廊下が軋みすぅーっと障子が開いた。

「……来いとは言ったけど、不法侵入は止めろ」

「すぐに駆けつけたのにひど〜い」

怒って三週間も黙って留守にしたとは思えないほど、銀時は普通だった。

土方のほうが戸惑って眉間にシワを寄せていると、銀時が障子を閉めて中に入り隣にぺたんと座る。

「ただいま」

「………おかえり」

そう答えてやったらニッと笑ってぎゅーっと抱き締められた。

「…………怒ってたんじゃねーのかよ」

「誰が?」

「てめーに決まってんだろ……黙って出かけたじゃねーか」

「あー……」

銀時は土方の首筋に顔を埋め、久し振りの匂いを堪能しながら言った。

「いっつもお前に置いて行かれるからさ、置いて行くほうの気持ちが知りたかったんだよねー」

嫌味か?と土方は思ったが、そうじゃなかったようだ。

「そしたらすんげー寂しくてさぁぁぁ。土方もこんな気持ちだったのかぁ、って気付いたから、ホント反省してます。マジすみませんでしたっ」

本気でそう思ってるらしい銀時に、土方の胸がきゅーっと痛くなる。

銀時が知った“置いて行くほうの気持ち”、そして土方が知った“置いて行かれるほうの気持ち”。

それは同じものだったのだから。

土方も両腕を銀時の背中に回してぎゅっと抱き締める。

「……お、俺も……寂しかった…ぞ……」

顔を真っ赤にしてそう言ってくれた土方に、銀時は嬉しそうに笑った。



 おわり



喧嘩ネタも定番だよねー。もう私には定番ネタしかないのよぉぉぉ。
……200本も書いてりゃ、そりゃあね……
いつも思うけど……せめてちゅーぐらいしとけや、銀さん!!(笑)
銀:「俺のせい!?」

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