原作設定(補完)

□その22
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「……仕事になっちまったのかなぁ……アイツ忙しいもんな………久し振りの休みぐらいちゃんと休みなさいよ…………休みだからって俺と会ってくれるとは限らないけどな、はははは…………はぁ……ちょっとプラプラしてみるか?もしかたら会えるかもしれないし……でもその間に電話が来たら……ああっ!携帯電話にしとくんだったぁぁ!!……金がないんだけどね……」

出かけるか出かけまいか悩み始めた銀時にこっちから電話をするという手も考えたのだが、この至近距離では小声でも会話は難しいだろう。

どうしたら……と考えていたら、銀時が立ち上がる気配がした。

「……よし!だーっと行って覗いてきてから、だーっと戻って待機!そうしよう!」

どうやら外出する決心をしてくれたようだ。

静かになったらすぐに万事屋を出て、それから偶然会ったフリでもしたらいいと土方がホッと息をついたとき、ガリガリッと目の前の襖を引っ掻くような音が聞えてきた。

『!!?』

「んだ、定春ぅ、土産の前に昼寝か?いいご身分ですねぇ」

どうやら定春が襖を開けようとしているんだと気付いたが、何も行動する暇はなかった。

「自分で開けられるだろう……が……」

銀時は親切にも襖を開けてやり、上段で固まっている土方を見つけて口をぽかんと開けていた。

『しまったぁぁぁぁぁ!!!』

すぐに怒鳴られるかと思ったのに、あまりのことに思考が鈍っていたらしい銀時は、

「……土方? 何やってんですか?」

「あ、あああ、あの……ちゃ……チャイナに閉じ込められて……」

「神楽? 何遊ばれちゃってんのお前……どうりで連絡がねーと……………………」

ようやく“土方がここに居る意味”に気付いたらしく、土方の視界から消えた。

土方がこそっと身を乗り出して下を見ると、銀時は両手で顔を覆いしゃがみこんでいた。

その手も顔も足も、見えるところは全部真っ赤に染まっている。

「お前えぇぇぇぇ!!! 何してくれちゃってんですかコノヤロォォォォォ!!!!」

押し入れの中では銀時と神楽の姿が見えず、“もしかして二人にからかわれているんじゃないか”とも考えた土方だったが、さっきまでのやりとりはどうやら本気らしい。

恥ずかしさで悶絶死しそうな銀時に、土方は押入れから出ると、

「……お祭り、行くか? 何でもおごってやるし……」

言い訳でも慰めでもなく、そう言った。

話を反らされたことで逆に落ち着けたらしい銀時も立ち上がり、

「………行く………」

まだ治まらない熱さをごまかすようにそっぽを向きながら、そう答えた。

始めて聞いた銀時の本心と、始めて見た銀時の本当の姿に、土方は嬉しそうに笑った。



++++



祭りはかぶき町の近くの小さい神社で行われているものだったが、屋台なども多くそれなりに賑わっている。

土方は自分で言ったように、あれもこれも買ってくれたので銀時は満足だった。

だが腹が満たされて落ち着いてくると、気になるのは土方の様子。

銀時がずっと隠してきた一切合財を聞いたというのにいたって普通……というか、むしろ機嫌が良さそうに見える。

『なんなのコレ、どうしちゃったのコレ、二人で並んで歩いちゃってるしぃ、文句も言わずに買ってくれちゃってるしぃ』

自分の気持ちを気取られないようにずっと素っ気なくしていたせいか、非番には土方から誘ってくれるようになったけれど、懐かれているという気配はまったく無かった。

始めはその気がなくてもこんな関係をずっと続けていたら、いつか情でも湧いててくれるんじゃないかと……そしたら告白できるんじゃないかと、そんなズルイことを考えていた銀時だったのだ。

あんな風に神楽のイタズラで押入れに閉じ込められ、寝耳に水な銀時の本心を聞いた土方は、怒ってもいいはずなのに笑っている。

もしかして態度に出ていなかっただけで土方も自分のことを?、そう思うと聞かずにはいられなかった。

「あ……あのさ……さっきの…………」

「あ!お面買う!」

銀時がモジモジと切り出す前にそう言って、“お面”が売ってる屋台に向かう土方を見送り小さく息をつく。

性急に答えを出さなくてもゆっくり確かめ合っていけばいいのかもしれない、と思った。そのほうが自分たちらしい、のではと。

少しして、屋台から戻ってきた土方の手に“トモエちゃん”のお面が握られていて、銀時は思わずつっこんでしまう。

「それかよっ。トッシーへの土産か?」

「いいんだよ。なんでも」

そう言った土方はお面をつけるとその手をそのまま銀時に伸ばして、手をぎゅっと握り締めてきた。

熱くて赤い手。きっとお面の中も同じようになっているのだろう。

素直じゃない自分の気持ちに、素直じゃない返事をしてくれた土方に、銀時は嬉しそうに笑った。



 おわり



……げろぼっしゃぁぁぁ……って砂を吐きたくなるようなオチになりましたね。
……いつもどおり? いつも砂を吐いてます(笑)
すみません、うちの子たちはやるこたぁやってるくせに、少女漫画みたいなバカップル丸出しで。
大人だからね、もうおっさんだからね二人とも。ホントすみませんでしたぁぁ。
……と言いつつ、こんな話しか書けない私でした(笑)

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