原作設定(補完)
□その22
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悩んで悩んで結論を出した銀時は、団子屋に居た。
電話をすれば土方は忙しい仕事の合間にでも出てきてくれるだろうが、そんな邪魔はしたくなかったので、偶然会えないかと出てきたのだ。
しかし会いたいと思えば逆に会えないもので、団子を1本づつ注文してだいぶ居座ったとき現われたのは、
「旦那ぁ、相変わらず暇そうですねぇ」
にまにまと笑みを浮かべて冷やかす沖田だけで、土方の姿はない。
明らかにがっかりした顔の銀時を無視して、沖田は隣に座った。
「聞きやしたよ、土方さんとお付き合いなさってるそーじゃねーですかぃ」
ズバッと言われて飲もうとしていたお茶を吹き出してしまったが、銀時は口を拭いながら落ち着いた素振りを装う。
「……アイツ、んなことまで話すのか?」
「俺に話すわけねーじゃねーですかぃ。近藤さんに報告しているのを盗み聞きしやした」
悪びれるどころかエッヘンと威張りながらそう言った沖田に、銀時は納得する。
土方の性格上あちこちに言いふらしたりはしないだろうが、近藤には内緒にしておけなかったようだ。
その報告を近藤がどう受け止めたのかはどうでもいいが、沖田のほうは鋭く察したらしい。
「それで、そいつぁどういう企みですかぃ、旦那」
表情は面白がっているように見えるが、目が笑っていない。
若くして真選組の隊長を張るだけあるなと思いながら、銀時も一旦は誤魔化してみたが、
「……企んでなんかいませんよぅ」
「だけど旦那からは一度だって、土方さんに片想いしてるような空気なんて感じたことなかったんですがねぇ」
通用しなかったようだ。
普段嫌っている様子でも土方を心配してんの?……なんてことを言うと更に怒らせそうなので、銀時は素直に本当のことを話してみた。
それが嘘じゃないと信じてくれたのか、
「…罰ゲームですかぃ…………へぇぇぇぇぇ」
ものすごく呆れられた。
そして、銀時にその気が無かったことと、その上で浮かない顔をしていることと繋げ、
「本当のことを言えずに悶々としてるぐれーなら、俺から言ってあげやしょーか?」
なんてことを言いだす。
随分土方のために気を回してくれるんだなと思ったが、今度は先ほどとは違い目が完全に笑っていた。
自分の知らないところで何か企まれるのは嫌らしいが、自分が係わって土方が酷い目に合うのは楽しいらしい。
その笑顔の意味が分からないわけじゃないのに、銀時はすぐに返事ができなかった。
このひと月の間に、そう頻繁でないにしろ会いに来てくれた土方を思い出す。
「旦那?」
訝しげに声をかけてくる沖田に、銀時は頭をポリポリ掻いた。
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