原作設定(補完)

□その22
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「ただいまアル〜」

「あれ、土方さん来たんですか?」

買い物から帰ってきた二人が、テーブルの上に置かれたままの紙袋を見てパッと顔を輝かせる。

4度目ともなると土方が持ってきてくれる高級菓子の味を覚えてしまい、楽しみにするようになっていた。

「…んー…」

「新八ぃ、早く開けるネ!」

ぼんやり返事をする銀時にかまわず、神楽は菓子が出て来るのを待っている。

きっちり包装されているのを開けるのは面倒なので新八に任せるちゃっかりぶりだった。

「はいはい」

紙袋から菓子を取り出した新八が、しみじみと言った。

「……土方さん、よっぽど銀さんが好きなんですねー」

改めてそんなことを言いだしたので、銀時が我に返って眉間にシワを寄せながら反論するが、

「あ? 貰いモン、持ってきてるだけだろーが」

「……でも、レシート入ってますよ」

菓子と一緒に入っていたレシートには今日の日付と午前中の時間が印刷されていたようだ。

間違って紛れ込んでしまったのだろうが、会う口実に用意したことが本人(銀時)にばれてしまい、

「案外ヌケてるアルな」

神楽にまでそんなことを言われてしまう土方。

銀時が微妙な顔をしているのを見て、新八が何か気が付いたようだ。

「もうあれからひと月ぐらいになりますけど、本当のことが言えないのは……」

「……なんだよ……」

「切腹させられるのが怖いんじゃなくて、土方さんを傷つけるのが怖いからじゃないんですか?」

箱から出したお菓子を神楽に渡しながら、ズバリと言ってくれた新八に銀時は言葉に詰まる。

銀時が言い返してこないので新八も核心したらしい。

「どういう風の吹き回しですか?ずいぶん優しいですね」

「……優しいわけじゃねーよ。“こんな”話じゃなけりゃ、ペロッと嘘でしたーって言えるんだよ」

「“こんな”話?」

問いかけられて、銀時は言いにくそうに……恥ずかしそうに答えた。

「……アイツ見てるとさ、思い出すんだよ。俺だって爛れた恋愛ばっかりしてるわけじゃないんですぅぅ。ガキの頃には、こう、フォークダンスで嫌そうな顔をしながら好きな子とドキドキしながら手を繋いだり、席替えで好きな子の隣に座れますようにって神頼みしたり……………のような、漫画にありがちな淡〜〜い恋なんかしちゃったりなんかしたこともあるんですぅぅ」

「……銀ちゃん、キモイアル」

「子供は黙ってらっしゃいっ!」

菓子を美味そうに食いながらも神楽は白けた顔をするが、新八のほうは面白いなと思っていた。

「だからさぁ、本当のことをアイツに言ったら、きっとショックを受けるだろうなぁ、とか、怒るよりもきっと悲しくなっちゃうだろうなぁ、と思うとその淡〜〜〜い気持ちを持っていた頃の自分が傷付いてるような気分になるんだよっ」

言いながらものすごく恥ずかしくなったのか机に顔を伏せて悶絶している銀時。

出会ってからこのかた、ダメな大人なところしか見てこなかったけれど、普通の人っぽいことも考えているようだ。

それでも新八はお菓子を見ながら、

「銀さんの気持ちは分からなくはないですけど……このままにはできないですよね?」

そんなことも考えてしまうわけで、銀時もちょっと表情を曇らせた。

「……分かってますぅ……」

そう答えてまたぼんやりする銀時だったので、珍しく真剣に考えているのだろうと、放っておいて神楽と一緒にお菓子を食べる新八だった。




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