原作設定(補完)

□その22
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「そんなことは無いと思いますけど。うちではいっつも土方さんの話ばかりですし」

「お、俺の話?」

「はい。土方さんが映画館で○○した、とか、土方さんが居酒屋で○○した、とか、土方さんの○○は○○で○○だとか」

『何を話してんだアイツわぁぁぁぁ!!』

想像していたのとは違う話でいらぬ恥をかいてしまったが、毛ほども興味ないだろう新八たち相手に嬉々として土方の話をする銀時が目に浮かぶ。

この様子なら“浮気”はやはり余計な心配だったかと思いきや、

「あ、でも確かにデートが無くなっても拗ねたり落ち込んだりはしなくなりましたね。前は鬱陶しいぐらいだったんですけど」

なんて言い出した。

どうやら土方の前だけではなく、新八たちの前でもそうらしい。

そしてそんな銀時が“らしくない”と思うからこそ、新八も不思議がるのだろう。

それから、バカップルの話なんかに興味ないという顔でテレビを見ていた神楽にも訊ねた。

「神楽ちゃん、何か知ってる?」

銀時の行動に対して一番良く知っているのが一緒に暮らしている神楽だ。

毎日見ているドラマの再放送なのか、食い入るように見つめながら答えてくれた。

「夜にコッソリ出かけてるネ。で、ニヤニヤしながら30分ぐらいで戻ってくるアル」

「…30分…」

浮気をするには微妙な時間だ。

が、すっきりするだけなら事足りなくもないし、それにニヤニヤしているというのが気になる。

それ以上話すことはないのか神楽がテレビに集中し始めたため、新八はなんとなく近くで寝ていた定春にも聞いた。

「定春は何か知らない?」

『犬に聞いてもな……』

土方に内心で見くびられたのを感じとったのかもしれない。

定春は起き上がって銀時のデスクまで行くと、一番下の引き出しの匂いを嗅いでから、

「わん!」

と吠えた。

「まじでか」

土方と新八が慌てて駆け寄り、引き出しの中を探ってみる。

ゴチャゴチャといらなさそうな物ばかり詰め込まれたその一番下から、

「あ」

“物的証拠”が出てきた。




夕方になって仕事から帰ってきた銀時を出迎えてくれたのは、土方と、正座させられてしょぼんとしている山崎だった。

その隣に銀時も正座で並ばせると、

「これはどういうことだコラァァァ!!」

二人の目の前に大量の写真を叩き付ける。

そこに写っているのは、寝起きの土方、食事中の土方、居眠り中の土方、お着替え中の土方……。

どうして山崎が呼ばれたかと言うと、どう見ても屯所内で撮られた写真であることから、“銀時に頼まれてやりそうなヤツ”として選出されたからだった。

それは当たっていたようで、

「すすす、すいませんでしたぁぁ!!」

土下座で謝る山崎と、ふて腐れたようにそっぽを向く銀時。

「だからどういうことだって聞いてんだ」

「そ、それが……旦那にちょっと……脅迫されてまして……」

あまりにもドタキャンが多い土方に、銀時は怒りの矛先を別に向けた。

仕事でコソコソ町を歩いていた山崎を裏路地に連れ込み、

「土方くん、働きすぎじゃね? ゴリラはあんなに暇そうなのに、おかしくね? 将ちゃんにチクっちゃおうかなぁ」

なんて言ってやったら、銀時があちこちで将軍と接していることを承知だった山崎は、コロッと脅されてくれたのだ。

あれこれと協議の結果、デートをドタキャンするたびに土方のプライベート写真を提供する、という契約を結んだ。

そのおかげでドタキャンされてもガッカリしなくなった、というわけらしい。

「銀さん悪くないからねっ」

全然反省してない顔でそっぽを向く銀時に、土方は“内心”を悟られないように厳しい顔をしたまま、

「……お前は先に帰ってろ」

「は、はいっ」

山崎を追い出し、久し振りに万事屋で銀時と二人だけになった。

不機嫌そうな顔をしたままの土方に、銀時はここで妥協しちゃいかんとばかりに言ってやったのだが、

「だいたいおめーがいっつもいっつもドタキャンするのが原因だし、俺にだって我慢の限界があるわけだからね。おめーは仕方ねーだろって思うかもしれないけど、銀さんの銀さんが…………」

隣に座った土方にぎゅーっと抱き締められて、それ以上言えなくなってしまう。

そして、ガッチリ抱きつかれて顔は見えないが、耳元で聞えてきた土方の声は嬉しそうだった。

「てめー、ホントに…………俺のこと好きな」

「……なっ……」

“好き”なんて言葉をお互い言わずに付き合っていた二人だったので、思わず銀時は「そんなことないですぅぅぅ」と叫んでしまいそうになるが、たくさんの証拠品を前に言い逃れはできそうにない。

“面倒で口うるさくて優しくも可愛くもなく、会いたいときに会えもしない恋人”を、写真でもいいから眺めていたいという証拠品。

「……くっ…………そうだよっ、だから休みぐらいちゃんと取れやコノヤロー!!」

照れ隠しに怒鳴りながら抱き締めてくる銀時を、土方も嬉しそうに抱き締め返してやるのだった。




屯所、局長室。

「……というわけで、新しい局中法度だから」

「……“というわけで”ってどういうわけ?」

“局中法度四十六 副長が非番のときに、局長が屯所を抜け出したら切腹”

「って俺限定ぃぃ!?」



 おわり



ま、うちの銀さんは土方にメロメロなので、オチなんてこんなもんです(笑)


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