原作設定(補完)

□その22
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#213

作成:2016/07/23




土方十四郎は悩んでいた。

その悩みの種とは銀髪天パーで憎たらしい笑みを浮かべる男、坂田銀時。

銀時と酔った勢いで肌を重ねてしまい、それはあろうことか半年経った現在にまで至る。

なんでこんなことになったんだ……というのはすでに終わった悩みで、現在の悩みは銀時の気持ちだ。

なぜこんなことを続けているのか。

最初はまったくの勢いとノリだったはずなのに、その後は会うたびに誘われるようになった。

ずるずるとその誘いに乗ったのは、思いの外、銀時に触れられるのが居心地良かったからだったと思う。

二ヶ月を過ぎるころには、非番になると土方の方から電話するようになっていた。

それに対して銀時は別に嬉しそうでもなく、電話がしばらくなくても残念がることもない。

酒を飲む時も土方に触れるときも、優しくもなく冷たくもない。

いつもどおりののらりくらりとしたいい加減な態度で、それでも女よりも面倒なだけの自分と関係を続けているのは何故なのか、土方は知りたくなった。

あまりにも女にモテないから男に?、なんて失礼なことも考えたのだが、よくよく観察してみると銀時の周りには女が多い。

それも少なからず銀時に好意を寄せているようなのに、それをかわしているように見えた。

女に不自由していなさそうなのに、と思ったら余計に分からなくなってしまい悶々とする日々。

今日は非番だというのに銀時にそれを連絡することもできず、公園のベンチに座って深い溜め息をついていたりする。

「銀ちゃんが気になるアルか?」

聞き覚えのある声と話し方に顔を上げると、ベンチの隣に日傘を差して酢昆布をもっさもっさ食べてる神楽が座っていた。

驚きながらも問いかけに反論してみたが、

「な、なんで俺がアイツなんかをっ……」

神楽は白けた顔をして地面を指差した。

そこには“クサレ天パー ニート野郎 タラシ どういうつもりだコラァ”などと足元一面に文句が書かれていて、それが手に持った木の枝で自分で書いたものだと気付いた土方は、慌てて足でそれを消す。

それから土方が言い訳をする前に、

「こ、これは……」

「銀ちゃん、マヨラのこと好きアル」

神楽があっさりと言った。

それは土方の悩みに対する答えなのだろうが、思いも寄らぬ言葉に眉間にシワが寄る。

「あ? 何言ってんだ」

「ホントアル。ものごっさ好きで鬱陶しいぐらいネ」

そのうんざりした顔は嘘を言っているようには見えないが、今まで自分が接してきた銀時からそんな素振りは微塵もなかった。

土方は小さく溜め息をついて言ってやったが、

「……そりゃあお前の勘違いだ。そんなはずは……」

「だったら証拠を見せるアル」

神楽は立ち上がり土方の腕を掴んで歩き出した。

怪力娘の神楽に引きずられるようにして歩きながら、連れて来られたのは万事屋。

そのまま中まで入って行くと、リビングにある押入れの襖を開けてその上段に土方の体を持ち上げるようにして突っ込んだ。

「お、おいっ!?」

「もうすぐ銀ちゃんが仕事から帰ってくるネ。ここで様子を見てるアル」

「なっ……」

「騒いだら殺すアル」

小娘とは思えないようなドスの聞いた声と本気の目つきで土方を脅し、襖をぴしゃりと閉めたのだった。

ここは神楽の寝床になっていると銀時から聞いている。

あれよあれよという間にこんなことになってしまい、土方は戸惑いながら息を飲む。

神楽の脅しが効いているわけではないが、動くことができなかった。

そんなはずはない、と思いながらも、銀時が自分を好きだという証拠を見たいと思ってしまったからだ。

『もし本当なら……』

ドキドキしながら待つこと……30分。

狭くて暗いところに居るせいか、なんでこんなことしてるんだと落ち込みかけたとき、外の階段をものすごい勢いで駆け上ってくる足音が聞えてきた。

足音は万事屋の玄関扉を開けて中になだれ込んでくる。



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