原作設定(補完)
□その22
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「神楽ぁぁ! 土方から電話あったか!?」
「ねーアル」
「まじでかっ!!お前、ちゃんと家に居ただろうなっ!?」
「ずーーーっと居たアル」
「…………なんだよ……今日は非番のはずなのにぃ」
しれっと嘘をついた神楽を信じたのか、銀時はおそらくソファに倒れ込んでがっかりした声で呟いた。
『……ほんとに万事屋か?』
今までこんな風に“会いたい”という気持ちを銀時から感じたことがなかった土方は、真っ暗な押入れの中で信じられない気持ちで聞き耳を立てる。
そんな土方に聞かせるためなのか神楽が言った。
「だったら自分から電話したら良いアル」
「……んなことできるわけねーだろ。連絡待ってるみてーじゃねーか」
「実際待ってるネ」
「そう思われるのが嫌なんですぅぅ…………カッコ悪ぃだろーが」
「銀ちゃんがカッコ良かったことなんて無いから安心するネ」
「ちょ……ちょっとぐれーあるだろ……」
「無いアル」
「……ねーのかよ……」
子供とは残酷なものでズバリと言いきられて、銀時の声は明らかに沈みこんでいた。
土方は、そんなことねーよ、と言ってやりたかったがここを出るわけにはいかない。
「そんなにマヨラが好きなら、最初からこざかしーマネなんかしないで告白すれば良かったアル」
呆れた声でそう言い出した神楽に、土方の息が一瞬止まった。最初から?
それに答える銀時の声は小さかったが、
「……告白したとしてOKしてもらえますかね?」
「……“キモイ、死ね”言われると思うアル」
「ぎゃぁぁぁぁ!んなこと言われたら立ち直れねーよ!俺はガラスのハートなんだよ!!」
更に情け容赦ない言葉に絶叫悶絶していた。
が、それは土方も同じでここが押入れじゃなかったら同じように叫んで転げまわっていたかもしれない。
銀時がそんな風に思っていてくれてたなんて思いもしなかった。そして、それを“嬉しい”と思ってることを改めて実感する。
が、子供はやっぱり容赦なかった。
「だったらもうマヨラは諦めたらいいアル。銀ちゃんには合わないネ」
ズバリと言われて銀時に悩まれたら地味にショックだったろうが、銀時はきっぱりと言ってくれた。
「嫌ですぅぅぅぅ!!きっぱりはっきりフラれるまで諦めませんんんん!!」
「……そんなに好きアルか?」
「あたりめーだろ!!あんなに可愛くて面白くてイケメンで働き者で、あっちの具合も良いヤツなんて俺の前に二度と現われねーんですよ!!!」
「……銀ちゃん、キモイアル」
子供相手に何とんでもねーこと言ってくれてんだぁぁぁ!!、と叫んで飛び出しそうになるのをぐっと堪えたとき、玄関のほうから声が聞えてきた。
「お待たせ〜、準備できてますか〜?」
新八の声だ。
セリフから迎えに来たようで、神楽がソファから飛び降りながら楽しそうな声で答える。
「キャホォォォウ!お祭り、お祭り〜! あ、人が多いから定春は留守番ネ。お土産買ってくるアル」
「わんっ」
新八にはお妙が同行しているようで、神楽だけ出てきたのを不思議がっていた。
「あら?銀さんは行かないの?」
「銀ちゃんは電話番アル」
「まあ珍しい。こんなときにお仕事待ち?」
「来ない電話を待つ悲しい男アル」
「まだ“来ない”って決まってませんんんんん!!!」
「じゃあ、銀さん、行ってきま〜す」
もうこんなやりとりは慣れっこなのか、新八たちは銀時を残したままあっさりと出かけてしまったようだ。
そこで土方はハッと気が付く。
『ちょ、ちょっと待てぇぇぇ!! 俺、どうやって出たらいいんだ!?』
銀時が家に残っているということは出る隙が無いということになる。
土方がこっそりうろたえていると、銀時の独り言が始まった。
「……ちぇっ…………祭りに連れてってやろうと思ったのになぁ……」
どうやら祭りには行きたかったらしい。
そういえば“飲む”と“寝る”以外に何もしたことがなかった。
祭りに誘うということは銀時なりに一歩を踏み出す覚悟をしてくれたのかと思うと、こうしてコソコソ隠れて銀時の本心を探っていることに胸が痛くなる。
「…………こっちから連絡するか?…………でもなぁ、“てめーから誘ってくるなんて珍しいな”なんて言われたら、言わなくていいことまで言っちまいそうだしなぁ……“誘いたくて誘ったわけじゃねーから、気まぐれだから”とかなんとか……んなこと言ってるから嫌われちまうんだろな…………いやいやいや、嫌われてるって決まったわけじゃないからね、うん、大丈夫……」
ネガティブになっている銀時に、切なくなってきた。
なんとか銀時に気付かれないように脱出しなければならない。
外出するか、トイレにでも行ってくれたらその隙に逃げようと息を潜めて様子を窺う。
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