原作設定(補完)

□その21
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「土方さんの秘密を知りてーなら、副長室に潜入するしかねーですぜぃ」

という沖田君の言葉にそそのかされて、現在、真選組屯所内をこっそり移動中であります。

旦那の髪は目立つからこれ被ってくだせぇ、ってほっかりむりするように言われたけど、今、真昼間だからね。隊士たちみんな気付いてるからね。沖田くんが一緒だから巻き込まれないように気付いてないフリしているだけだからね。

隊士たちはともかく土方に気付かれたらマズイので、髪を隠してコソコソ移動してたら、沖田くんがある部屋の前で立ち止まって襖をパーンッ!!と……。

「おいぃぃぃぃぃ!土方くんに気付かれるでしょーがぁぁぁぁ!!」

「大丈夫でぃ。土方さんは、近藤さんと出張中でさぁ」

「…………じゃあ、なんでこっそり潜入したの?」

「気分でさぁ」

悪びれない沖田くんにそれ以上言うのは諦めて、ほっかむりを取ると沖田くんに続いて部屋に入る。

付き合っているのを隠してるわけじゃないけど、屯所には来るなと言われているので部屋に入るのは始めてだった。

きっちり整えられた……というより、何もなくて殺風景なぐらいだ。

「人の出入りが多いんで私物は押入れの中でさぁ」

俺が考えていたことが分かったのか、沖田くんはそう言って真っ直ぐ押入れに向かう。

なるほど。押入れの中は、服やらマヨやらマヨやらマヨやら……。

「マヨ貯蔵庫?」

「他のヤツに任せておくと切らしたりするんで、自分でストックするようにしたらしいでさぁ」

ごっそり積み上げられたマヨの壁をドサドサと崩すと、奥からタンスとかカラーボックスが出てきた。

「土方さんはマメで思い出の品とか捨てられねー人なんで、昔の女とかお気に入りの店の女の名刺とか、どっかに保存してんじゃねーかと踏んでるんでぃ」

う……そういうのを保存してたら保存してたで切なくなりそうだ。

だけどここまで来てしまった以上、何かしら証拠を見つけないとと開き直って、沖田くんと一緒に押入れの中を探索してみる。

10分ぐらい漁ったとき、冬物の着物などが入った引き出しの奥に雑誌らしきものが入っている感触があった。

隠すように隅っこに入れてあったその雑誌を引っ張り出し、動きが止まる。

“ドSの彼氏を喜ばせるテクニック集”
“彼氏に飽きられないためのエロ技特集”
“彼氏がメロメロになる必殺技集”

中身を見なくてもタイトルだけで土方が“何のためにこれを所持していたのか”が分かって、顔が熱ぅぅぅくなってきた。

「……旦那、愛されてやすねぇ、うらやましーや」

沖田くんが白けた声で棒読みでそう言った。予想と違うオチに興味が無くなってしまったんだろう。

俺は雑誌を元の場所に戻し、

「こ、これは見なかったことにしようね。うん、そのほうがいいよ、うん」

漁って崩れたものもきちんと並べ直してから立ち上がる。

土方が俺のために隠していたことを暴いてしまった罪悪感から、一刻も早くこの部屋を逃げ出したかった。

「そ、それじゃあ、沖田くんっ、また……」

「旦那ぁ。俺、明日非番なんで、ソフトクリームがにゅい〜ん出て来るバイキングにでも行きやせんか?」

「え?何、急に。奢ってくれんの?」

「旦那の奢りでさぁ」

「はぁ?なんで俺が……ハッ!」

にやりと笑った沖田くんに背筋が寒くなった。

沖田くんは土方の弱みを探ることだけじゃなく、探った後に俺を脅迫することまで狙っていたんじゃね?……と今更気付いても遅い。

「土方さんにバレたらフラれやすねぇぇ」

コ、コノヤロォォォォォ!!!



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