原作設定(補完)
□その21
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再び大きな溜め息をつきながら土方は座り直し、煙草に火を点ける。
「……で? どうするんだ?」
「……どうするってなぁ……○○ホテルのディナーバイキングってなんぼすんの?」
土方が携帯で検索してくれた。
「……7980円だ」
「たっかっ!! ……合計は?」
「俺んとこが……人、てめーんとこが11人……って、バイキングだぞ? なんでチャイナは10人前なんだ」
「あー、それね。うちの子、育ち盛りで尋常じゃないぐらい食うもんだから、一人分で腹いっぱいにすると次に入店拒否られるんだよねー。いつもは3人前払ってやるんだけど、今回は人の金だから10人前分食いだめする気だね」
「……ちっ……合計はコレだ」
携帯の電卓機能で算出された結果を見せられたら、現実味がない金額に逆に冷静になってきた。
「そうね、そんぐらいね。で?多串くん、持ってる?」
「……持ってるけど……」
「持ってんのかよっ!! そんじゃ、解決ってことで……」
ホッとした顔で立ち上がる銀時の着物を土方が掴んで引き戻す。
「ちょっと待てぇぇぇぇぇ!!! なんで俺が全部出すことになってんだ! てめーも半分出せっ!!」
「出せるかぁぁぁぁ!!! つーか半分っておかしくね!? 俺んとこ11人分なんですけどっ!? 一人でごっさ飲み食いしといで最後に“ワリカンね”とか言うちゃっかり女ですかコノヤロー!!!」
「れ、連帯責任だろがっ!!」
「だいたいねー、○○ホテルのディナーバイキングとか言い出したのおたくのドS王子だろ? うちの子たちは庶民的だから、バイキングといえばソフトクリームがにゅい〜ん出てくるとこって決まってんだよっ!!」
「……それは否定しねー。昨日の昼間にテレビでやってたからな……」
「でしょー。じゃ、そういうことで……」
「だから待てって言ってんだろーがっ!!」
再度逃亡を試みる銀時を、土方も再度引き戻した。
しぶしぶ座り直しながら文句を言う銀時に、土方が渋い顔をする。
「金持ってんだから出してくれてもいいじゃねーかよ」
「持ってるけどこんなことに使うのは嫌に決まってんだろ」
「じゃ、どーすんですか」
「…………半年、我慢するしかねーだろ」
「はぁぁ!?」
我慢するということは“お付き合いする”ということだ。
「おまっ、何言っちゃってんの?」
「仕方ねーだろっ! アイツラの思い通りに奢るぐらいなら、てめーにくれてやったほうがマシだっ!」
「まじでかっ!!」
さっと差し出された銀時の手はベチッと叩かれた。
「“マシ”っつただけだっ。付き合ってるフリだけすりゃいいんだろーが」
「いやいやいや、ニコ中マヨラーと付き合ってるなんて噂になったら銀さんのコカン……沽券に関わるからねっ」
「……どうせ悲しむ女もいねーだろーが」
「はあ? おまっ、俺がどれだけモテるか知らねーんですぅ」
「モテるわけねーだろ、そんな死んだような魚の目をした天パーなんて」
「見た目じゃないですぅぅぅ、男はハートですぅぅぅぅ!」
「はいはい」
「だったら俺がどんなに良い男か証明してやりますよコノヤロー!」
「……上等だ、やってもらおうじゃねーかコラァ」
ついさっきやりとりしたのと同じ台詞に誘導されたと気づいたのは、土方がにやりと笑ってからだった。
「ちょっ、待っ……」
「嫌なら金はてめーが全部払え」
それを言われたら“かまぼこ貧乏”の銀時には拒否ができない。
『……チッ……しょうがねーな。金もねーし、どうせ多串くんは忙しくて暇なんてねーだろーから、何もしねーでも半年ぐらいすぐだろ』
諦めた銀時と土方は、子供たちの前に戻ると宣誓書を改めて誓う。
こうして二人はお付き合いすることになったのだった。
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