原作設定(補完)
□その21
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江戸を未曾有の嵐が襲い、あちこちから非常事態の連絡を受けているのに、出動しようとする近藤さんを引き止めることしかできなかった。
それが自然現象でなかったのを知ったのは、救助などで江戸を走り回り完徹した後だ。
一休みしようとフラフラもたつく足でようやく副長室に戻ってテレビを点けると、結野アナの占いが流れていた。
『今日一番ツイてる方は天秤のアナタです』
番組を降板するとかで万事屋が落ち込んでいたが、今頃喜んでいるだろうと思っていたら、
『特に天秤座でモジャモジャ頭…死んだ…魚のような…目をしている方…』
泣きながら笑顔を浮かべる女に、アイツが何かに係わっているんだとすぐに分かった。
トラブルに引き寄せられる体質のアイツは、またきっとボロボロになりながら戦ったのだと思う。
しかも今回は相手があの女で、万事屋のハリキリ様が目に見えるようだ。
イラつくのと同時に不安にもなる。あの女も万事屋に感謝して好意を寄せるようになるのだろうか。
だとしたら万事屋にその気がある以上、今度こそ上手くいってしまうんじゃないか。
駆けつけて行って様子を見たかったが、それをするのも悔しくて部屋を出ることができなかった。
ようやく出向く決心したのは翌日。
あの嵐では屋根でも吹き飛んでしまっているんじゃないかと思ったが家は無事で、そして中には上機嫌の万事屋。
「土方くぅぅぅん!!聞いて驚けコノヤロー!!」
案の定あの女がらみのトラブルに係わっていたコイツは、興奮気味にことの顛末を話してくれた。
驚くべき内容だったはずなのに、頭に入ってこない。
そしてトドメに、
「で、じゃぁぁぁぁん!! とうとうサインも貰えたんですぅぅぅ!!」
嬉しげに出してきた色紙には“銀時LOVE 結野クリステル”と書かれていた。
決定的だ。
万事屋が何やら話しているが耳に入らず、関係を始めたのが自分のせいなのだから、引き際も自分で決めようと思った。
「……
だったら俺はもう用無しだな……」
「ん?何……」
「……頑張れよ」
笑って言ったつもりだったが、上手く笑えたかどうかは分からない。驚いたような顔をしていたから失敗したのかもしれない。
さっさと逃げ出そうと思ったのに、万事屋に腕を掴まれて引き戻された。
「ちょっ……頑張れって何を?」
聞くのか、それを、俺に。
腕を振り解こうとしたのに馬鹿力のヤツにそれも叶わず、キレ気味に言ってしまった。
「結野アナだよっ!良かったじゃねーか、上手くいって!」
「あ? まあ念願のサインは貰えたから良かったけど……だから?」
「サインじゃねーよつ! つ、付き合うんだろうがっ!!」
こんなひでーこと言わせやがってと思っていたら、万事屋はさっきよりもっと驚いた顔をしてから、眉間にシワを寄せて言った。
「付き合うわけねーだろーがっ!!」
「なんでだよっ!ずっと好きだったんだろーがっ!!」
「それはファンとして……っていうか、おめーと付き合ってんのに、んなことするわけないっつーの!!」
「だからって、それとこれと……は……………」
それとこれとは違う、誤魔化す必要なんかねー、と言いたかったのに、声が出なかった。
あ? 今、何言った?
「…………だ……誰と…誰が…付き合ってんだよ……」
「土方くんと俺に決まってんでしょうが…………って、あれ?」
これ以上ないぐらい驚いている俺に、万事屋も表情を曇らせ、
「……もしかして……俺ら、付き合ってなかった?……」
自信なさそうにそう聞いてきたが、俺はうなづいてやることなんてできない。
好きだと言ったことも、言われたこともなかった。ただ欲求を晴らすために寝ているんだと思ってた。
俺の考えていることに気付いたのか、万事屋は顔を真っ赤っかにして頭を抱える。
「…まじでか…………ですよねー……俺ら大人だもんね。ヤッてるから付き合ってるとは限らないよねー……」
その声は、恥ずかしくて情けなくて、そしてガッカリしているように聞えた。
「……万事屋……お……」
「言わないでぇぇぇ!!やめてっ、これ以上居た堪れない気持ちにさせないでっ!!」
「……じゃなくて……」
「いいのっ、気にしないからっ!!つーか、忘れてやって、お願い!300円あげるからっ!!」
真っ赤な顔でギャーギャー喚きながら耳を塞ぐので、
「聞けやぁぁぁ!!!」
両手で頬を掴んで強引にこっちを向かせる。
これだからモテねーヤツは。
ヤッてその気になって付き合ってるつもりだったんなら、もうちょっと意思表示しろよ!!
「……俺は……」
悔しいけれど、恥をかかせてしまった分、洗いざらい話してやろうと思うのだった。
おわり
単純に、アニメ銀魂の“陰陽師篇”を見ながら考えた話でした。
思いつきだったので簡素です。
土方のやきもきした感じとか、もっと書けたらよかったんでしょうけど、
銀さんの恥ずかしがってる姿が書けたのでいいやと思います(笑)