原作設定(補完)

□その21
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#203

作成:2016/07/02




特殊警察真選組の副長として働く俺にはテロリストという敵が居る。

さらに隊服を脱いで肩書きを持たない俺にもやっぱり敵は居る。

キャバ嬢にストーカーして仕事を抜け出し俺の非番を邪魔するヤツや、いつでも俺を付け狙って殺害しようとするヤツ。

そして、

『それでは、結野アナのブラック星座占いでございます』

コイツだ。

「結野アナ〜、今日もめっさ可愛いなぁ」

目覚まし時計が鳴って慌てて布団を抜け出し、テレビを食い入るように見つめる万事屋。

その背中を見つめながら着替えた俺は、イライラしながら声をかける。

「それじゃ、帰るぞ」

「……」

「……おい!帰るぞっ!」

「あ、はいはい。またね〜」

振り返りもせず答えた万事屋に、殴ってやりたい衝動を抑えて乱暴な足取りで家を出た。

俺が怒っていることなんてどうせ気付きもしないのだろう。




あの死んだ魚のような目をしたダメ人間を、ほとんど一目惚れ状態で好きになった。

男に興味なさそうなヤツが相手じゃ、絶望的な恋だった。

幸いだったのは、俺から見てもダメ人間に見える男だけに女にモテナイことだ。

だが、しばらく観察するうちにヤツが自分で思っているほどモテていないわけじゃないことが分かった。

女の窮地は放っておけず、助けられた女はヤツに少なからず好意を寄せているように見える。

自分も同じ境遇だったと気付いたときには死にたくなったが、アイツにその気がないならその女たちのことは心配なさそうだ。

唯一万事屋の口から出て来る女の名と言えば、テレビのお天気お姉さんをしている結野アナだった。

とはいっても所詮はテレビの中の女で、ヤツの手に届く者ではない。

結野アナの結婚にショックを受けて落ち込み泥酔するヤツに近付き、慰めて優しくして酔った勢いで関係を結んだ。

正攻法で迫ることもできない姑息な手だとは分かっているが、これぐらいのハンデをもらっても良いだろう。

その一回限りで終わっても仕方ないと思っていたが、女日照りが長かったからか、体の相性が良かったと思ったからか、その気になってくれたヤツと関係は続いた。

そんなある日。

「土方くん!!土方くぅぅぅん!!」

「んだよ」

「今日ね、銀さん結野アナに会っちゃったんですよコノヤロー!!」

待ち合わせた飲み屋に満面の笑顔で飛び込んできた万事屋。

結婚して仕事を辞めていた結野アナと、犬の社交場になってる公園で偶然会ったらしい。

テレビの中の女だと油断していたら、そんな偶然で出会ってしまうこともあるのか。

「やっぱりごっさ可愛かったんだよっ、ちっちゃくて守ってあげたくなるタイプなのに、人妻の色気が漂っちゃったりなんかしたりしてさぁ。 定春と結野アナの犬が上手くいってくれたら俺とも“いけない情事”的なことになってくれないかと思ったんだけど、ゴタゴタしているうちに帰っちゃったもんだからサイン貰えなかったんだよチクショー!!」

一瞬心配してしまったが結局何も無かったようだ。

と胸を撫で下ろしたのもつかの間、

「土方くん!!土方くぅぅぅん!!」

「んだよ」

「結野アナが離婚したんだって!お天気お姉さんにも復帰するらしいし、また毎日会えるんだぞ、キャッホォォォウ!!」

……という感じで今に至る。

離婚してからというもの、テレビにかじりつくわ、定春連れてあの公園に日参するわ、結野アナの話ばかりするわ。

ファンの域を超えないとはいえ、好きな女の話を毎日されるのは腹立たしいものだ。

それでも、その不満をぶちまけてヤツと会えなくなるのは困る。

ギリギリまで我慢しながら、恋人になれなくてもこのままの関係が続いて欲しいと願っていたのに、“トラブル”は起きた。



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