原作設定(補完)
□その21
19ページ/34ページ
#204
作成:2016/07/04
二十とピーッ年、生きてりゃいろんなことがあるものだ。
かぶき町で万事屋なんて始めたときには、ダメガネとゲロインと巨大犬を養うことになるなんて思いもしなかった。
え?養ってねーだろ? できるだけのことはしてますぅ。
そして、もう1つ思いもよからなかったこと。
シャワーを浴びてベッドに戻ると、スヤスヤ寝ているヤツ……土方十四郎。
仕事仕事で一月も放置しといて、ヤルだけヤッったら満足して眠っちまったようだ。
あ、誤解しないでね? 逢い引きと言やぁもっぱら布団の中でも、ちゃんと付き合ってますから。
時計を見ると土方が帰らないといけない時間までまだ少しある。
目元にこさえたクマのためにも、ギリギリまで寝かせといてやろうと、俺も布団に潜り直した。
ぐっすり寝ていたはずなのに気配を察し、土方は俺の腕に腕を絡めてぎゅーっと抱き締めると安心したようにまた眠ってしまった。
がっはぁぁぁぁ!! 可愛くね?コレ、ものごっさ可愛くね!?
まさかコイツとこんなことになろうなんて、こうして側にいる自分が一番信じられない。
真面目で働き者で、俺がダメなことを知っているから見栄を張る必要もないし、嫉妬するほどのイケメンも角度を変えてみると可愛く見えてくる。
味覚の好みがまっっっっっったく合わないことを除けば、俺たちは割りと上手くいっている。
なにせ、土方くんってば…………超エロイんですものぉぉぉぉぉ!
いやいやいや、違うからね。よくあるネタの“酔った勢いでヤッちゃって始まったお付き合い”とかじゃないから。
何度も絡んでいるうちに「こいつ可愛くね?」って思ったからそうぶっちゃけてみたら、土方のほうもね、俺のことを好きだったんだって言ってくれちゃったりなんかしたりしてね。
それからウキウキワクワクドキドキの初めての夜に、土方くんってばピーッとかピーッやピーッだとか、更にはピーッとピーッまでやってくれちゃって銀さん骨抜きぃぃぃぃ、みたいな。
土方がそんなに積極的でエロイなんて想像もしてなかったから、そのギャップにしばらくは大興奮だったんだけどね……。
よっく考えてみたら、土方くん……どこでそんな手練手管を覚えてきたんですかコノヤロォォォォ!!
そりゃあモテモテイケメンだから、本気の相手にも遊びの相手にも不自由はしなかっただろうけどさぁ、あの性格じゃそんな遊んでそうに思えないじゃん?
だったらどこでどうやってあんなピーッとかピーッやピーッだとか、更にはピーッとピーッまで覚えたのぉぉ!?
……というわけで、幸せなんだけど目下銀さんの悩みは“土方がエロイ理由”だったりなんかします。
「……はぁぁぁ……」
団子をもっさもっさ食べながら深い溜め息が出る。
“ツケなんかするんじゃねー。金は払っておくから一日2本まで、大事に食え”
そう照れくさそうに言って土方が手配しれたおかげで、銀さんは毎日団子を食えるようになったんだけどね、悩みがあると団子の味も分からなくなるよね。
「旦那ぁ、んな顔して食ったら団子が勿体ねーですぜぃ」
言いながらドカッと隣に座ったのは沖田くん。
土方も一緒かと辺りを見回したが、どうやら一人……というかサボって団子を食いに来たんだろう。
あいにく今日は沖田くんとドSトークを繰り広げる気分じゃないなと思ってから、気がついた。
沖田くんなら土方くんの性事情に詳しいんじゃないだろうか、と。
土方をからかったり苛めたり弄んだりするのを趣味としている沖田くんなら、土方の弱みになりそうなことはご承知なんじゃないか。
後からよくよ〜〜〜く考えてみれば、沖田くんにそんなことを聞くなんて愚かなことだったってなるんじゃないかと思うけど、今の俺はいっぱいっぱいだったんだよね。
「……土方くんって……モテるよねぇ」
「ツラァだけは良いですからねぇ。アホな女共が寄ってくるのは確かでぃ」
「……彼女とか……いたのかなぁ」
「あの堅物がそんな浮かれたもんにウツツを抜かしてんのは、旦那が始めてだと思いやすけど」
「じゃ、じゃあ……そういうお店とか? よく行ってたりしたのかなぁ」
「他のヤツらからは“興味なさそうだ”って聞いてやすけど…………って、旦那ぁ、まどろっこしいことは止めにしませんかぃ? 何が聞きてーんでさぁ」
勘が良い……というか、土方がらみの“面白そうなネタ”に敏感な沖田くんには、すぐに見破られてしまった。
子供相手にこんな話をするのもどうかと思いながら、
「……土方くんエロイから……どうしてかなぁ、なんて……」
そう聞いてみたら、沖田くんがニヤリと笑った。
『あ、マズイ、失敗した』と気付いたけれど、もう後には引けそうにない。
.