原作設定(補完)

□その21
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#201

作成:2016/05/17




昨夜は真選組の宴会にお呼ばれした。

神楽と新八が買い物途中に、ヤツらの追いかけていた攘夷志士を捕まえたらしく、お礼として催してくれたのだ。

捕まえたといっても偶然だった。

定春が電柱かと思って小さいほうをひっかけたのが侍の足で、キレた男に逆ギレした神楽とで大乱闘になり、騒ぎに駆けつけた真選組が捕まえてみたら指名手配中の過激攘夷党の志士だったらしい。

つまりメインは神楽と新八だったのだが、そこは雇い主として銀さんもご相伴にあずかり参加してやった。

さすが高給取りだけあって用意された酒も食事も最高のもので、たらふく飲んで食って、良い気分で酔っ払った翌朝、なぜか鬼の副長・土方十四郎と付き合うことになっていた。





二日酔いでズキズキ痛むこめかみを親指で押しながら、銀時は目の前に並ぶ新八たちに聞き返す。

「は?もう一回言ってくんない?」

「だから、昨日から銀さんと土方さんは恋人同士なんです」

聞き間違いじゃなかったようで、頭痛に加えてめまいまでしてきた。

「どういう……う……ことだコラァ……」

そう弱々しく毒づいたのは土方で、怒鳴ろうとした自分の声で頭痛がして気持ち悪くなったらしく、口元を手で押さえている。

どうやら“理由”を知らないのは土方も同じなようだ。

情けない姿を晒す二人に、子供たちは溜め息混じりに改めて話してやる。

「二人ともごっさ酔って、いつものように喧嘩を始めたアル」

「どっちが強いとか偉いとかって話から、どっちがモテるかって話になって……」

「二人とも自分がモテるって譲らねーんで、だったら付き合ってみて判定すればいいってことになったんでさぁ」

酔ってなくても意地の張り合いが得意な二人である。

そんな言い合いになってもおかしくない……といえないこともない……かもしれない。

だが、そこは酔っ払いの言い出したことなのだから、

「んなもん本気にして付き合う必要はねーだろーが」

至極最もなことを言う土方だったが、子供たちはにやりと笑って一枚の紙を差し出した。

そこには、

“宣誓書 坂田銀時と土方十四郎は、恋人としてお付き合いすることをここに誓います。半年以内に別れた場合は、○○ホテルディナーバイキングを、隊士全員、ならび万事屋(神楽10人前)にご馳走します”

酔っ払いのふにゃふにゃした字でそう書かれていた。

「なっ……」

驚きながらも咄嗟にそれを奪おうと土方が手を伸ばすが、さっと避けられてしまった。

「これが証拠でさぁ。反故にするってぇなら、奢ってもらいやすぜ」

「新八っ、ディナーバイキングって美味いアルか!?」

「○○ホテルだからねー、ものすっっっっごく美味しいものが揃ってるよ」

「きゃほぉぉう!!」

大喜びの神楽の声が頭に響いて顔をしかめながら、

「ちょ……ちょっと待てっ……」

「……ちょっと二人で話し合いさせてくれませんかね?」

そう言って二人は、ふらふらの足取りで一旦副長室へと避難するのだった。




「…はあぁぁぁ…」

二人は同時に、コップの水を一気飲みして大きい溜め息をつく。

そしてお互いの顔を見た後、もう一度溜め息。

「……なんであんなことになってんだ……」

「知りませんよ。どうせ多串くんが余計なこと言い出したんでしょ」

「んだと? だいたい、どっちがモテるって、俺に決まってんだろーがっ」

「はあ? おまっ、俺がどれだけモテるか知らねーんですぅ」

「モテるわけねーだろ、そんな死んだような魚の目をした天パーなんて」

「見た目じゃないですぅぅぅ、男はハートですぅぅぅぅ!」

「はいはい」

「だったら俺がどんなに良い男か証明してやりますよコノヤロー!」

「上等だ、やってみろやコラァァ!!」

と睨みあったところで、我に返る。

つまり“そんな感じに話が進んであんなことになった”ということを、自分たちで証明してしまったのだ。



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