学園設定(補完)

□同級生−その2
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沖田から土方のアパートまでの地図を受け取った坂田は、そのまますぐに最寄駅までやってきていた。もちろん授業はサボりだ。

地図を手に改めてホッと息を付く。

実はあのとき土方がなぜあそこに居たのか気になっていたのだが、ホテルを利用するためじゃなく近道として通っただけのようだ。

同時に苦しいことも思い出してしまって溜め息もつく。

急に目が合わなくなったころから自分の性癖を知られてしまっていたのだろう。

別に隠しているわけではなかったのだが会って数回でカミングアウトするのも変な話だし、土方は純朴そうなのでいきなりは刺激が強すぎるかななんて思ってしまったのだ。

その所為で避けられたりあんな態度を取られたのなら会いたくないかもしれないが、とにかく心配なので行くことにする。

駅前のドラッグストアで薬や額に貼る熱を冷ますシート、土方が自動販売機で買ったスポーツドリンク、お粥のレトルトを数種類を購入して、近道を使って土方のアパートへ向かった。

二階の土方の部屋の前に立ち、緊張しながら呼び鈴を押す。少し待ったが出てこない。

再度押してまた待つが、やっぱり出てこない。

もう一度押してから、もしかしたら病院にでも行ってるのかと思った。

沖田に電話番号なりメールアドレスなり聞いて連絡してから来れば良かったのだが、それでは会って貰えないかもしれないし。

諦めようかと思ったとき、

「……はい……」

呼び鈴の上のスピーカーから辛そうな声で返事をするのが聞えてきた。

緊張が舞い戻ってきてドモリながら返事をする。

「あ、あのっ、坂田だけど……」

「……あ?……」

「坂田です。沖田くんに休んでるって聞いて……」

「……」

帰れと言われるかと思ったのだが、鍵を開ける音がしてドアが開いた。

真っ赤な顔で髪も服装もぼさぼさな土方が、疑うような目つきで坂田を確認している。

「……何だ?……」

「え、あ、お見舞い。大丈夫……じゃねーよな」

熱も高そうだしなんだかゆらゆらしてるし、買ってきた物を渡してすぐ帰るのはかなり不安だったので、

「…お邪魔しても…いいか?」

思い切ってそう聞いてみたら、坂田をじっと見つめて黙っていた土方が、

「…ん…」

とだけ答えてドアを開けたまま奥に引っ込んだ。入って良いということだろう。

「お邪魔しま〜す」

あんな拒絶をされた後なのに、至って普通な土方にドギマギしながら坂田は中に入った。

前を歩く土方は足取りもフラフラで、何度も手を貸してやりたくなるのをとりあえずぐっと堪えた。さすがに触られるのは嫌かもしれない、と思ってしまったからだ。

ワンルームの部屋に戻った土方はベッドに入らず坂田の座る場所を作ってくれようとするので、さすがにそれは慌てて止める。

「ああっ、いいよ、適当にするし。土方くんは早くベッドに入らねーと」

自分が起してしまったせいでもあるし申し訳なさそうに言うと、土方はよっぽど具合が悪いのだろう、遠慮なしに布団に潜った。

口元まで布団を被って落ち着く土方を見てから、坂田はチラリと部屋を見回す。

ワンルームだけど物が少ないせいか広く感じるし、割と片付いてもいる。

動くのもやっとだと聞いていたのでもっと散らかっているかと思っていたのだが、ゴミは一応全部空いたレジ袋に突っ込んでいるようだ。

空のペットボトルと、病院の薬らしきもの、それと水の入った洗面器がテーブルに置いてある。

『飯はちゃんと食ってんのかな……』

なんて考えていたら視線を感じ、土方がジッとこちらを見てるのに気が付いた。

「ん?何?」

「…何しに…来たんだ?」

「あ…だからお見舞い。飲みモンとかてきとーに買ってきたけど、飲む?」

「…ん…」

スポーツドリンクのキャップを開けて渡すと、少し体を起して受け取った土方はほとんど一気にそれを飲んでしまった。

「も、もう一本飲む?」

「ん」

二本目はゆっくりと飲む姿が、相手は病人なのだから不謹慎この上ないが、やっぱり可愛いな、なんて思ってしまう。



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