学園設定(補完)
□同級生−その2
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「土方さん、いつの間にあの人と仲良くなったんですかぃ」
「…仲良くって言うか…」
なぜ沖田が楽しそうなのか、近藤が動揺しているのか分からなかったが、土方は坂田と知り合った経緯を話してやった。
それを聞いてから、沖田は呆れた顔をして溜め息をつく。
「土方さ〜ん、そいつかぁナンパの常套句でさぁ」
「…………ナ、ナナナナ、ナンパァァァ!?」
あまりにとんでもないことを言い出したので、大声を出した土方が周りから注目を浴びてしまったがそれを気にしている場合じゃなかった。
近藤はますます青い顔をするし、今度は山崎まで納得顔をしている。
「“前にどっかで会ったことない?”、“初恋の人に似てるんだ”、ベタなセリフでさぁ」
「だ、だけど…………ハッ!やっぱり俺、女に見えるのか!?」
「見えるわけねーでしょーが、鏡見たことねーんですかぃ」
「…ぐっ…」
あの時は一瞬“そうかも”なんて考えてしまったが、沖田に冷たくはっきり言われてしまうと、確かにそう考えたことすら恥ずかしくなってしまう。
女に見えないのだとしたら、と深く考える前に近藤が教えてくれた。
「実はな……」
と言いながら“内緒話”するように小声になるので、四人とも自然とテーブルの中央に体を寄せる。
集まった三人に近藤は言い難そうに呟いた。
「アイツな……ゲ…ゲイらしいんだよ」
「!!!?」
土方は思わず驚いてしまったが、土方をナンパしたのだとしたらソレしかない。
「俺、アイツと同じ授業1つ持っててさぁ……口さがないヤツラがそんな話をしてたんだよ」
「お、男の彼氏でも居るってことですか?」
「それがなぁ、決まった相手は居なくて……つまり……その……」
「セフレってことでさぁ」
「………そ、そうらしい」
三人がヒソヒソ話しているのを聞きながら、土方は内心納得していた。
だったら自分に似てるという初恋の相手はやっぱり男なんだろうし、学校で見かけるときいつも違う男子生徒と一緒だったのはそういう理由かもしれない、という事に対しては。
坂田が同性愛者だということは別に構わないと思った。田舎暮らしで回りにそういう人は居なかったが、今はテレビやネットなどで堂々としている“彼ら”の存在感は高く、土方はそれを嫌悪するような育て方をされていない。
だけどなんだか胸がモヤモヤしていた。
何も言わない土方に、
「土方さん、狙われてるんですぜぃ。気ぃつけねーとゲイになっちまいますぜぃ」
そう言ってニヤニヤ笑う沖田に、ますます気分が沈む。
アレが本当にナンパなのだとしたら、あのがっかりした顔も、初恋の話も、全部嘘だということになる。
自分が狙われているという話よりも、そっちのほうが土方にはショックだった。
ソレがあったから坂田のことが気になったんだと思う。嘘をあんな顔で普通に言えるようなヤツに見えなかった……と思ってしまうことすら、坂田の狙いだったのだろうか。
そんなモヤモヤが収まらず、それから土方はあのもふもふの銀髪を探すのを止めた。
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