原作設定(補完)

□その19
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あれから銀時からの連絡が途絶えたことに、土方はイライラを募らせていた。

連絡はいつも銀時のほうからしてきたためそれに慣れきってしまい、今更自分から電話をかけることもできない。

土方の機嫌が悪いことなどいつものことのように思えるが、いつもとは違うと気付いた近藤が二人きりのときに心配そうに声をかけてきた。

「面倒いろいろ任せてすまねーと思ってるが、前はもっとうまくガス抜きできてたんじゃねーか?」

毎日毎日忙しいわ、近藤も沖田も隊士たちも言うことを聞かないわ、土方が組を思ってうるさく言っているのを煩わしいと思われいるわ。

それはいつもと変わらないはずなのに、何をしても気分が晴れない理由は一つだった。

銀時が全てリセットしてくれている。

くだらない話も、顔をしかめたくなる食い合わせも、優しい口付けも、暖かい体温も、ずっと銀時が与えてくれた土方に必要なものだった。

好きだと繰り返す銀時が同じ言葉を欲しがっているのは分かっていたのに、言わなくても満足してくれていることに甘えていた。

なのに、

『……嫌いだって、言っちまった……』

そのせいで銀時は連絡を寄越さない。

土方は携帯をチラリと見て苦しげに眉を寄せた。




原因も対処法も分かっているのに行動できずに1週間が経過。

イライラを通り越してぼんやりすることが多くなった土方に、今日も見回りに出た途端沖田に逃げられた。

それを探す気にもなれず、意識が散漫とした意味のない見回りをしていたとき、正面からこちらに向かってくる白い姿に足が止まる。

ゆらゆらだらだらとやる気のない足取りで銀時が歩いて来るのが見えた。目を反らせずにいると、銀時も土方に気が付く。

笑ってくれなくてもいい。「久し振りじゃね?」と嫌味っぽく声をかけてくれたら何事もなかったように話せるのに。

しかし銀時は土方に気付かなかったとでもいうように、そのまま通り過ぎてしまった。

「……っ……」

胸がぎゅっと締め付けられる。あの時、“嫌いだ”と言われた銀時もこんな気持ちだったのだろうか。

素直になるのも甘えるのも怖い。真選組副長して自分が保ってきたプライドを、銀時にために崩すのは怖い。

それでも銀時の優しさも暖かさも自分には必要なのだ。

土方は踵を返し小走りで銀時を追いかけた。姿はもう見えないがまだ遠くには行ってないだろう。

『万事屋っ』

白い後姿を捜してキョロキョロしていると、ふいに横から伸びてきた腕に脇道に引き込まれた。

それが銀時だとすぐに分かって戸惑う土方に、人目に着かない少し奥まで連れ込んだ銀時が久し振りに笑いかける。

「呼んだ?」

「………」

何もかも分かっている風な銀時に、土方は悔しそうに顔を歪めて口を噤んだ。

こんなにお膳立てしたのにスラッと“ごめん”と言えないのが土方らしいと言えるし、追いかけてきてくれたことで必要としてくれているのも分かっている。

だけどせっかくなのでここはもう一歩歩み寄って貰わないと、と問いかけた。

「お前が思ってること素直に口にできないとこも可愛いと思ってる。だから言わなくてもいいよ。だけど嘘はつかねーで」

あの日をやり直すために。

「俺のこと好きか?」

「………」

喉まででかかってる言葉は、声にならないかわりに顔に出た。

眉間にシワを寄せて眉を八の字にし、銀時を睨みながら真っ赤になっている土方。

銀時が欲しかった“答え”に、本当に嬉しそうに笑った。




長く鬱積したイライラを解消させたあと、布団の中でご機嫌の銀時に土方は聞いてみた。

「………ホントにいいのかよ」

「ん?」

「言わねーでも」

“言えない自分”に少しは申し訳ないと思っている土方の顔。それを見れば分かるので、銀時は笑う。

「……だって顔に書いてあるし」

「なっ……書いてねー!」

「銀さんには見えるんですぅ」

「……っ……」

真っ赤になって悔しそうな顔をする土方をぎゅーっと抱き締めてやる銀時だった。



 おわり



昔考えたネタが消化されると嬉しいな。
土方が素直じゃないのはいつものことなんですが、全体的にクサくてすみません。
こういうイチャイチャが好きでたまらない私でした。

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