原作設定(補完)

□その19
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#187

作成:2016/03/09




団子屋で3本目の団子を食べ始めた銀時は、目の前に見慣れた制服が見えて顔を上げる。

「…なーんだ、総一郎くんじゃん」

「総悟です。土方のくそったれなら今日は来ませんぜぃ」

刺のある言い方をしながら隣に座り団子を注文した沖田に、銀時は小さく笑う。

「またやりあったのか?」

「頭が固くて融通が利かなくて洒落が通じなくてくぞ真面目なヤツが悪いんでさぁ」

何があったのかは分からないが、土方からは沖田への不満を聞いている銀時としては笑うしかない。

そんな銀時に、沖田は前から一度聞いてみたかったことを訊ねてみた。

「あんなでも旦那と二人のときは素直に好きだとか言ったりするんですかィ?」

「あ〜、言わないな」

「……付き合ってんですよね?」

「付き合ってんのかね?」

あの土方が銀時と“仲良く”していることを公言したときはどんな心境の変化かと思ったのだが、銀時の様子では可愛くないのは相変わらずのようだ。

沖田は呆れたような溜め息をついて言ってやったが、

「旦那も物好きな人ですねぇ」

「土方くんのそういうとこ全部好きなんだよねぇ」

なんて嬉しそうに答えた銀時は、まさしく筋金入りのようだったのでそれ以上は何も言わなかった。



数日後、久々の非番にドタキャンもなく会えた二人は、酒を飲んで今日はホテルへのお決まりコース。

酔って熱くなった身体に触れながら、いつもなら土方が自分とこうしてくれているだけで嬉しいと思える銀時だったが、胸に小さいもやもやがあった。

先日の沖田との会話に嘘偽りはなかったけれど、“二人のときは素直に好きだとか言ったりするのか”と聞かれたことが心に残った。

そういえば一度も好きだと言われたことがない。

好きになったのは銀時のほうだし、それに気付いて勝機が少ないだろうと割と必死に口説いた。

だから流されるような雰囲気で土方が答えてくれたことだけで十分だと思ってしまった。

何度も繰り返し“好きだ”と囁く銀時に、同じ言葉を返してくれなくてもそれでいいと……。

だからつい聞いてしまった。

「…土方くん、俺のこと…好きか?」

ふいうちで問いかけられた土方のほうも、胸に小さいもやもやがあった。

毎日毎日忙しいわ、近藤も沖田も隊士たちも言うことを聞かないわ、土方が組を思ってうるさく言っているのを煩わしいと思われいるわ。

そんなもやもやを忘れたくて銀時に会っているのに、思いがけない答えづらい質問につい、

「…嫌いに決まってんだろ」

そう言ってしまった。

いつもの銀時だったらそれを照れ隠しと判断し笑うこともできたのだが、今日は“不安な気持ち”に突き刺さる。

「……そっか」

寂しそうに呟いてベッドから降りると崩れた着物を直し出す銀時に、土方は戸惑いながら声をかけた。

「おい」

「ごめんね。銀さん、両想いじゃねー相手とはしたくないんだよね。今日は帰るわ」

小さく笑ってはいたけれどらしくない表情でそう言って銀時は部屋を出て行く。

一度も好きだと言ったことがない。

それでもこの関係を続けてきたということは、銀時は“両想い”だと思っていてくれていたということだ。

一人残された土方は、放置されてムカつくよりも悲しいと思っている自分に眉間にシワを刻む。



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