原作設定(補完)
□その19
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#186
作成:2016/03/08
「王様ゲームやろう!」
嬉しそうな顔の銀時にそう言われて、土方はあたりを見回す。
ここは万事屋。
ずっと仕事で休みも取れずにいる土方が、泊まりは無理だけどせめて食事だけでも、と連絡してきたのに対し、だったら家でまったりしたい、と銀時に言われたためだ。
そのため当然、新八も神楽も定春も居ないわけで。
「……二人でか?」
「二人ででっす」
いそいそと取り出した割り箸には片方に王様印が付いていた。
「……二人でやって楽しいのか?」
「二人でやったら王様になる確立が高いだろーが」
二人しかいないのだから確率は二分の一だ。
だが、それでは王様ゲームの醍醐味である“誰が選ばれるか分からないドキドキ感”が無いんじゃないか、と思うのだが、ずっと寂しいのを我慢させているという後ろめたさがある。
「…ズルしてんじゃねーだろうな」
「二人なのにズルしてどーすんだよっ」
差し出された割り箸二本には細工のしようもないので、溜め息をつきつつ、
「……分かった……」
土方は了承するのだった。
「そんじゃ、さっそくぅ」
銀時が楽しそうに割り箸を握った手を土方の前に出してきたので、片方を抜く。そこには王様印が書いてあった。
「ちっくしょぉぉ!!王様!なんでもご命令くださいっ!!」
「………じゃあ、マヨ買っ……」
悔しそうに盛り上がる銀時とは裏腹に土方は至極冷静で、ちょっと悩んでから無難な命令を出したのだが、
「ちょっと待ったぁぁ!買ってこいとかなしだから!“イチャイチャ王様ゲーム”なんだからスキンシップ的なものでお願いします!」
思い切り却下されてしまった。
いつ“イチャイチャ王様ゲーム”になったんだと思いながら、確かにそうでなければ二人でやる意味がないな、と新しい命令を下す。
「……じゃあ……肩揉め」
「了解っ!3分なっ!」
嬉々として肩を揉む銀時に、まあしらばく付き合ってやるか、と土方は小さく笑う。
それから1時間。ゲームカウントはすでに15回目に到達したが、土方の全戦全勝。
王様印の割り箸を手にテンションは下がりっぱなしの土方に対し、銀時は絶好調にテンションが上がっていた。可哀想な方向に。
「なんでだぁぁああああ!!ちくしょうっ!次はどこ揉みますか、お客さんっ!!」
「……もう揉むとこねーよ」
14回も王様になっているうちに肩だの腕だの足だの揉まれまくって、もうスキンシップは十分なんじゃないかと思えるのだが、銀時にはまだ余裕があるようで、手をわきわきさせながら、
「いや、まだ胸が……痛いっ!」
下品なことを言うので、土方は思いきり足を蹴ってやった。
というか、どうやったら確率2分の一の王様ゲームで全敗なんて真似ができるのか。負け組みとは悲しい生き物だ。
「……多串くん、なんかとっても失礼なこと考えてね?」
「……考えてねーよ……つーかてめー、ちったぁズルしろよっ!」
「だってぇぇ」
口を尖らせて拗ねる銀時に、土方はごっさ大きい溜め息をつくと、王様印の割り箸で額を叩いた。
銀時がマッサージ師になっている間に、ちょっと長めの休憩時間は終わってしまい、これが最後の命令になる。
「おら、最後だぞ。特別に王様にハグを許可する」
「…え…」
「従えねーのかよ」
「……喜んでっ」
王様の温情に満面の笑みを浮かべて、銀時は土方を抱き締めるのだった。
おわり
こんなことを考えながら仕事をしている私ってやつは……と思える話ですね(笑)
いつだって銀さんにはトホホでイヒヒな毎日を過ごして欲しいなぁ。