原作設定(補完)
□その19
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#182
作成:2016/02/20
「……あ、土方?銀さんですよ〜…あ?番号出るから分かる?いや、一応ね、名乗るもんでしょうが……はいはい、用件ね。それなんだけどさ、今日約束してたじゃん?だけど仕事が入っちゃってさ〜……いやいや、真面目に働いてますよっ。依頼が少ないだけで、やるときはやるからねっ……うん、だもんでまたにしてくんね?ちょっ、いつかな、ってそんなこと言わずにできるだけ早く会ってください、お願いします……おう、じゃーな」
楽しそうな顔で挨拶をし受話器を置いたと同時に、銀時は机に上半身を倒れこませた。息は荒く顔は高潮し頭痛もぶりかえしてくる。
それを見た新八が呆れたように言った。
「素直に“風邪引いたから”って言えばいいのに。お見舞いに来てくれるかもしれませんよ」
「…んなことしたらうつしちまうだろうが……忙しいんだからダメですぅ」
「うつすようなことするつもりアルか? いくら溜まってるからって我慢しろヨ」
「神楽ちゃん、そんなこと言っちゃダメだから」
具合の悪い銀時を相手に言いたい放題の二人は、更に身支度を整えていた。
「じゃあ、僕たちもうつされたくないので帰りますね」
「ちゃんと治しておけヨ」
「……薄情もの〜……」
さっさと出て行ってしまった二人にぼやきつつ、諦めて布団まで戻って寝ることにした。
人の気配がして目が覚める。熱はまったく下がっていないのか、むしろ酷くなっている感じにぼーっとしている。
暗闇ということは夜なのだろう。布団の横に座って自分を覗き込んでいる者の名を呟いた。
「……土方?……」
頭がぼんやりしているせいか、土方が居るはずがないことは思い出さなかった。
土方は小さく笑って頷き、ペットボトルの水を手に取る。
「おう。水飲むか?」
「ん」
状態を半起きにして受け取った水を飲んでいたら、レジ袋からプリンを取り出す。
「プリン買ってきたけど、食うか?」
「ん……」
それも受け取りスプーンで一口食べた銀時は、表情を曇らせた。
ようやくデートの約束をキャンセルしたことを思い出す。
「味がしねぇ。やっぱり夢だ。土方がこんなに優しいわけな……ぶあっ、冷たっ」
ガッカリと溜め息をついて呟いた途端、びちゃびちゃに濡れた冷水タオルが顔面に叩きつけられた。
「どういう意味だコラァ」
怒気を含んだその声は夢とは思えない。
冷水タオルの効果か意識がはっきりしてきて、タオルを剥ぎ取ると改めてその名前を呼んだ。
「……土方っ!?」
「だからそうだって言ってんだろ」
「…なんで…」
「てめーがドタキャンしやがるから、一人でちょっと飲むかと出てきたらメガネたちに会ったんだよ」
そこで聞きもしないのに銀時の嘘を教えてくれたらしく、鍵を預かって土産を携え万事屋にやってきたらしい。
嬉しくて笑いそうになるのをグッと我慢する。
「……風邪うつったらどうすんだよ……」
「てめー……うつすようなことするつもりか? いくら溜まってるからって我慢しろや」
「ぶふっ、神楽と同じこと言ってますよ」
冷たいタオルが再度銀時の額に乗せられ、起した身体も布団に押し沈められた。
「うつる前に帰るから、さっさと寝ろ。週末にまでに治さねーと、また延期だぞコラァ」
さりげなく次の約束をしてくれた土方に、銀時は笑う。
水とプリンと土方効果であっという間に治るような気がして、素直に目を閉じるのだった。
おわり
出来たてホヤホヤですが、病気ネタはありがち……でも萌える。
運動で熱を下げるなんてイチャイチャは、うちのサイトでは無理ですよ?(笑)