原作設定(補完)

□その19
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仕事がら“探し物”は得意だ。特に今回は“重要参考人”がとても目立つ人物なので分かりやすい。

一日調査した結果、“真選組の隊長が病院に日参している”という情報を得ることができた。

直接隊士に探りを入れてもみたのだが当然口を割らないので、翌日、近藤の後を着けることにした。

行先が病院だと知ってすぐにでも問い詰めてやりたかったが、“銀時が土方の行方を必死に探す理由”が思いつかなかったのだ。

いっそのこと付き合ってることをバラしてしまいたかったが、土方の許可もとらずに今後の彼の立場を危うくするようなぶっちゃけをするのは、怖い。ものごっさ怖い。

というわけで、私服の近藤、沖田、山崎が“ちょっとそこまで”という装いでふらっと出かけた後を追い、辿り着いたのは噂どおりの病院だった。

真っ直ぐ向かった病室には警備もなく、土方に何かあって入院しているにしては無防備な気がする。

それでも他に手がかりがなくて、病室のドアを開けたと同時に銀時はふらりと三人の前に姿を見せた。

「あっれ〜、お揃いでこんなとこで何してんの?」

「だ、旦那っ」

山崎が動揺しているため、なにかあるのは間違いない。

「誰かの見舞いか? 最近お妙へのストーカーもできないほど忙しいって聞いてたけどなぁ」

「ストーカーじゃない!愛の警備だっ!」

怒る近藤を無視して病室のネームプレートを見ると土方の名前はなく、当然偽名を表示しているのだろう。

山崎の身体を押し退け、

「ここで会ったのも何かの縁だし、俺も見舞ってやりますよ」

「ちょ、ちょっと、旦那っ」

「はいはい、お邪魔しますよ〜」

入り込んだ病室には4名分の名前とベッドがあったのに、使われているのは奥の一つだけ。

そこには、毎晩毎晩夢に出てきたときと同じ姿の土方が眠っていた。

あーあ、という顔をしている山崎たちを無視してベッドに近付く。

「土方くんじゃん。どうしたの?病気?」

顔色は悪くないし寝ているだけのようにも見えるが、場所が病院というだけでこんなにも胸が苦しい。

必死で平静を装いながら銀時が聞くと、近藤が頭を掻きながら答える。

「……まあ、万事屋だしかまわないだろ。実はな、先週の任務中にある気体を吸い込んでしまってな」

「な、なんだよソレ」

「実は…」

眠っている土方を視界の隅に置きながら、真剣な顔の近藤の話を聞いていた銀時だったが、そのオチのいい加減さにどっと疲れてしまった。

「天人製の女子向け玩具で、“好きな人にキスしてもらうと目が覚める”というファンタジー溢れる商品だったんだよなぁ」

言うのも聞くのも恥ずかしい話だが、どうやら事実らしい。

解毒剤を入手するのに手こずっているという話で、土方はずっと眠り続けているのだと言う。

「……つーか、製品的にマジなもんなのか?」

「一緒に沖田隊長も同じ気体を吸ってますが、眠ってないので……」

「……好きな人いないの?沖田くん……」

「いやせん」

きっぱり答える沖田に、“好きな人が居ないから眠らなかった”ということで玩具の信憑性が出てきたらしい。

が、それはつまり“土方に好きな人が居る”ということになり、心当たりも告白もなかった近藤が落ち込んでいた。

「水臭いよなぁ、トシのヤツ。俺に一言も相談もなくさぁ……」

言いたくても言えなかったに違いない。相手が俺では……と銀時はちょっと申し訳なく思う。

「…いつ起きれんの?」

「それが……そもそもが玩具ですし、“キスすれば起きれるじゃん”的な話で解毒剤自体が少ないらしくて…」

「トシの不在を隠しておくのも限界なんだけどなぁ」

緊急事態というわけだ。それにあの夢。


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