原作設定(補完)

□その19
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#189

作成:2016/03/13




「ほらよ」

万事屋にやってきた土方が、そう言って銀時の目の前に出した甘い香りのする箱。

酒やつまみなど買ってくることはあっても、菓子を持ってきたことがないので珍しいなと思いながら銀時は箱を開ける。

「なに?貰いもんか何か?」

土方ならそんなところだろう。

箱の中身は見るからに高級そうな菓子の詰め合わせで、上機嫌で早速その中の一つを手に取った銀時だったが、

「チョコのお返しだ」

そう言われて手を止めカレンダーを見る。今日は3月14日、ホワイトデーだった。

一月前のバレンタインに確かに銀時は土方にチョコを贈った。しかも手作り。

本当は土方から貰いたかったのだが、どう考えても、どう企んでも、どう唆しても貰えそうにない。

なので、“男同士なんだからチョコなんてどっちが贈ってもいいんじゃね?”という結論に達し、ノリノリで手作りチョコを贈った。

始めは微妙な顔をしていた土方だったが、それが銀時の気持ちの現われだと理解して喜んでくれたように思う。

だからこそのお返しだった。

が、土方の予想とは裏腹に、銀時は嬉しそうな顔をするどころか不機嫌そうにして、手に取った菓子を箱に戻す。

「…どうした?」

「これさ、誰が買ったの?」

「山崎……」

土方はついポロッと本当のことを答えてしまったが、すぐに“ソレ”じゃマズかったなと言い訳を追加した。

「いや、でも、店を選んだのは俺だし……金も出したし……」

言いながら“ソレ”でもないなと思った。銀時が不機嫌そうな顔を変えないからだ。

「そうじゃなくね?」

「……菓子は菓子だろうが…」

「……それが俺のチョコの対するお返しってわけですか?」

銀時が求めていることを察しながら意地をはる土方に、銀時は冷たく笑った。

そこで素直に謝れる土方でもないわけで、

「要らないなら捨てろ」

そう言って立ち上がると部屋を出た。

本当は泊まりの予定だったがそんな気分じゃないし、銀時も追ってきて引き止めもしない。

苛立ちと、そしてちょっとの申し訳なさで、土方は眉間にシワを寄せながら屯所に帰るのだった。




そして翌日。

「ほらよ」

万事屋にやってきた土方が、そう言って銀時の目の前に出した甘い香りのする箱。

“デジャヴ?”と思えるほど昨日と同じシチュエーションだったが、土方の顔が違っていた。

顔を真っ赤にしてプルプルと震えている土方に、銀時は嬉しそうに笑う。

昨日と同じ菓子の箱。土方がこの菓子を選んだのには理由があって、前に銀時が「ごっさ美味そう」と言ったことがあったから。

その店の名前を思い出して、山崎に“一番高い詰め合わせ”を買って来いと頼んだ。

だから知らなかったのだ。その店がピンクとフリルと女だらけで、男が入るにはとても勇気がいる店だったことを。

銀時の“気持ち”に対するお返しのために、改めて自分で買いに行った土方は店の前で30分立ち尽くした。

その間も、勇気を出して店に入ったあとも、ジロジロチラチラ見られながら恥ずかしい思いをさせられた土方は、そのままの足で万事屋にやって来てくれた。

当然銀時は店のことを知っていたため、そんな思いをしてまで買ってきてくれた土方の“気持ち”に今度こそ笑顔で受け取る。

「銀さん超愛されてるぅ」

「に、二度とてめーのリクエストなんか聞かないからなっ!!」

「はいはい。俺も超愛してるからね」

軽い口調で言いながら菓子を嬉しそうに食べる銀時に、苦労して買ったものを喜んで貰えるのは良いなと思う土方だった。



 おわり



………すみません、本当にたった今、思いつきで書いた話です。
何を書こうか悩んで悩んで……ぽっと浮かんだものをオチのないまま書き出してしまい、
もう書き直しもできない状況での、コレです……すみません(笑)


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