原作設定(補完)
□その18
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数日後の夜、土方は出動帰り、徒歩で屯所に向かっていた。気を抜くと余計なことを考えてしまいそうになる自分の頭を冷やすためだった。
かぶき町を流れる川にかかった橋を渡ろうとしたとき、銀時が川面を見つめて立っているを見つけ足を止める。
土方を避けているはずなのに、屯所への通り道であるここに居る意味を考え、止めた足を進めた。
ぼんやりしていた銀時だったが、近付いて来た気配に顔を上げる。
ちっとも嬉しそうじゃないその顔に、土方は“もしかして”と思ったことを後悔して表情が硬くなった。
「……ひさしぶり……」
「…おう…」
銀時は小さく笑ったが、土方は返事をするのが精一杯で近付くことも出来ない。
「お仕事帰り?」
「…ああ…」
いつも銀時が笑って嬉しそうに話かけてくれるのを待っていた土方は、自分から言葉にできず、すぐに重い空気に耐えられなくなった。
「……じゃあな……」
そう言って銀時の脇を通り抜けながら、銀時の視線を感じて胸が苦しくなる。
このまま別れたら二度と触れることができないような予感に、立ち止まって自分から話かけないとダメだと強く思ったとき、
「土方っ」
銀時に名前を呼ばれ、土方は足を止めた。
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立ち止まっても振り返らない土方だったが、その背中はすごく緊張しているように見えた。
恥ずかしくて言えなかった青臭い気持ちを思い出し、銀時は頭をボリボリ掻きながらなんとか言葉にしてみる。
「あー……ずっと言いたかったことがあるんだけどね……俺さ……お前のこと、好き……なんですけど」
言ってはみたものの、想像以上の青臭さに恥ずかしくなってきた。
もっとスマートにカッコ良く言えなかったのだろうかと銀時は思ったが、あいにく土方は銀時にそんなものを期待していない。
またしても先に言われてしまったが、今度こそちゃんと答えることができる。
ゆっくり振り返った土方は銀時に負けないぐらい顔を赤くして、
「……俺も……好き、だし……」
そうたどたどしく言った。
本人は精一杯普通に言ったつもりなのかもしれないが、悔しそうな顔になっているのが銀時には可愛く見える。
「そういうことはもっと早く言いなさいよコノヤロー」
「て、てめーだって言わなかっただろうがコラァ」
何週間も二人でもんもんと悩み続けてきたのがムダになって、二人は嬉しそうに笑いながらお互いの文句を言うのだった。
久し振りにちょっと飲んで行くかと言った土方に、久し振りだからこ二人になりたいですと答えた銀時。
やっぱりそっちかよとがっかりすることはなかった。銀時にそう言われて土方の気分も盛り上がる。
誰も居ない万事屋にもどるなり抱き締め合い唇を重ねた。好かれていると思うだけで、肌は熱く、唇は甘い。
かぶき町ではまだまだ宵の口の時間で、家の外は酔っ払いと呼び込みの声で騒がしかったが二人の耳には届かなかった。
何度も何度も繰り返す口づけに土方はすっかりその気なのに、銀時がなかなか触れてこない。
まだ何かあるのかと土方が不安げな顔をするので、銀時は照れくさそうに言った。
「…なんかいつもと感じ違うなぁって思ったら……コレ、初めてだよね」
隊服の裾を掴まれて、確かにいつも着替えて会っていたなと気付く。
普段の着物との違いに戸惑っている銀時に土方は小さく笑い、スカーフの根元を少し緩めた。
「自分で脱ぐか?それとも…脱がせるか?」
一瞬きょとんとした銀時だったが、土方からの初めての誘い文句に満面の笑みを浮かべる。
「そりゃあ、制服は脱がせるのが男のロマンでしょ」
「エロ親父かよ」
「エロいのは土方のほう…いてっ」
「さっさとしろやコラァ」
「…りょーかいっ」
土方の期待に答えて銀時はエロいことを再開するのだった。
+++
真夜中、目を覚ますと土方が隣に寄り添ったまま眠っていた。
事が終わったあとに側で寝ている姿を見るのは久し振りだ。
起さないようにそっと手を伸ばして身体を抱き締め、その暖かさに胸をほっこりさせながら銀時は目を閉じた。
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真夜中、目を覚ますと銀時が自分をしっかり抱き締めたまま眠っていた。
事が終わったあとに背中を向けずに寝ている姿を見るのは久し振りだ。
体勢的には寝づらいのだが抱き締められているのが嬉しくて、その暖かさに胸をほっこりさせながら土方は目を閉じた。
おわり
微妙に長くなりました。結局オチはイチャイチャしてるだけのバカップルでしたね。
いい年のおっさん同士でなにやってんだか、と思いますが、こんな二人が大好きです(笑)