原作設定(補完)
□その18
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#172
作成:2016/01/29
「てめーが好きだ。だから俺と付き合え」
目の前の酔っ払いが色気もなくそう言ったのに対し、
「ここの飲み代払ってくれたら付き合ってもいいよ」
と色気もない返答をしたほうも酔っ払っていた。
「分かった。じゃあ、これからよろしく頼む」
「おっけ〜い、我が命に代えても〜」
そうしてめでたく交際がスタートしたのを、翌日思い出した銀時はソファに座ってぐったりと項垂れた。
『何アレ、マジアレ、なんなのアレェェエエ!』
ガンガンと頭の中を暴れまわっている頭痛の原因は酒のせいだけじゃないようだ。
『えっとぉ……土方だったよね? 間違いなく土方だったよね?』
銀時がチビチビ飲んでいた居酒屋にふらっと現われた土方が、次々と美味い酒を勧めてくるので二人でけっこうな量を飲んだ。
普段は会えば喧嘩ばかりの土方も、酔っていれば機嫌が良いんだなと思った。
こんな雰囲気は悪くないと感じていたところに、告白されて、ついついノリで返事をしてしまったのを覚えている。
『夢……じゃないよね、ちゃんと覚えてるもん。じゃなかったら……なんかの罠かっ!?土方が酒を勧めてくること自体がおかしくね?そうだよ。きっととんでもない仕事とか恐ろしい仕事とか恥ずかしい仕事とかさせられるんだぁぁああ!』
“土方と付き合う”なんて有り得ない状況を自分なりに結論付けた銀時だったが、数日後、土方から電話がかかってきて「そらきた!!」と恐る恐る待ち合わせ場所へやってくると、
「……よう……」
と照れくさそうにはにかむ土方が待っていた。
『あれぇぇ?』と思いつつ一緒に酒を飲んで帰宅。
数日後、町中で会って団子屋でまったりお茶。別の日にはファミレスで軽く食事+デザート。
そしてまた夜に会って飲む。
……を繰り返したあと、ラブいホテルでシャワーの音を聞きながら銀時は苦悩していた。
『何コレ、マジコレ、なんなのコレェェエエ!!』
脱ぎ散らかされた着物も、触れた肌も、脳に焼き付いている切なげな表情も、間違いなく土方のもの。
いつとんでもない仕事とか恐ろしい仕事とか恥ずかしい仕事とかの話をされるんだろうと思いながら日々を過ごしていたら、行き着くところまで来てしまったようだ。
『あれ?もしかして今までのは全部デートですか?もしかして順調にお付き合いしてたってヤツですか?もしかして……土方……本気!?』
やることやってからそれに気付くのも我ながら情けない。
頭を抱える銀時のところに、シャワーを浴びた土方が戻ってきた。
「何やってんだてめー」
挙動不審な銀時に眉を寄せる土方に、恐る恐る聞いてみた。
「……あのさ……何か変わったことなかった?」
「あ?何かってなんだ」
「えっとぉ……あ!もしかして沖田くんから何か貰って食ったりしてねーか!?」
「んな危ないマネするわけねーだろーが」
「……ですよねー」
沖田のせいにしてみようとしたのだが失敗に終わった。
他に“土方の凶行の理由”がないかとグルグル考えている銀時だったが、
「……どうした?」
心配そうに問いかけてくる土方の表情に、初めて胸がきゅーーんと締め付けられた。
土方が本気ですべてが本音だったとしたら。
「……土方……なんか、可愛いね」
ぽつりと呟いた銀時に、土方の顔が赤く染まる。
「な、何言ってんだいきなり……バカかてめー」
不機嫌そうにそう言っても、真っ赤な顔とゆるんだ口元が嬉しいんだと教えてくれた。
その可愛さに銀時は初めて自分がから土方をぎゅっと抱き締めてみたら、土方も甘えるように抱き返してくる。
そしてようやく“付き合ってる”を自覚したのだ。
しかし、告白されたことをたった今まで疑ってました、というのは墓場まで持っていこうと誓う銀時だった。
おわり
ああ、楽しい。銀さんがマヌケなのが好きです。