原作設定(補完)

□その18
14ページ/18ページ



一仕事終えた銀時は、チョコの甘い香り漂う万事屋でソファに寝転びのんびりしていた。

そこへ乱暴な足音と共に乗り込んできた土方は、驚く銀時に覆いかぶさるようにぐいっと顔を寄せる。

「……おおぐ……」

「やるっ!」

「ええぇぇええ!?」

勘違いしてポッと頬を赤らめる銀時に、

「いやん、なに、多串くん、昼間っから、そんな……」

「違げぇっ!!」

きっぱり言い捨てながらも、体勢的に誤解も無理ないと土方は身体を起こした。

チョコの匂いがする部屋。さっきのケーキはやっぱり銀時が自分で作ったものらしい。

だったらやられっぱなしというのは気に食わないと、土方も顔を赤くしながら言う。

「…材料まだ残ってんだろ。俺も…作ってやる」

図らずとも銀時が山崎に言ったように“照れて恥ずかしくて不気味”な二人になった。

「なんだ、そっち………って、ええぇぇ、土方くんがぁ?」

「んだコラァ、不満かよっ」

ガラじゃないのは分かってると不本意そうな顔の土方に、銀時は嬉しそうに笑った。

「土方くん、不器用だからなぁ」

「混ぜて焼くだけだろうが」

「おまっ、お菓子作りを舐めちゃいけませんよ」

よっこらせと立ち上がった銀時は、土方が例の紙袋を持っているのに気付いた。

「それ、持ってきたのか?」

「あ? ああ、置いてきたら他の奴らに食べられちまうからな」

『……んなもん誰も食べないと思うけどね……』

自分で作っておきながら、マヨ臭ガッチリのケーキにそう思う銀時だった。




それから、台所はまさに戦場。思っていたよりも不器用な土方に、銀時は自分で作ったときの5倍疲れた。

「あちっ、跳ねるじゃねーかっ」

「多串くん、混ぜるときはね、もっと静かに……」

「ごほっごほっ、粉が舞うじゃねーかっ」

「多串くん、もっとゆっくり……」

「甘っ、もっとしょっぱいほうが良いんじゃねーか?」

「多串くん、銀さん甘いほうが好きだから……」

「マヨは?どこで使うんだ?」

「多串くん、銀さんマヨはいらないから……」

それでも土方がチョコや小麦粉にまみれながら一生懸命作っている姿に、文句を言うどころかちょっと胸がときめく。

数時間後、不恰好ながらなんとか形になったチョコケーキがテーブルに置かれた。

「うまそっ!多串くん、やればできるじゃん」

「ふん」

自分でもなかなかの出来栄えと思っているのか偉そうな土方だったが、銀時が口に入れるのを見るときはさすがにドキドキした。

そんなに真剣に心配そうに見つめられたらマズイとは言えないだろうけれど、銀時はケーキにかぶりついてもっさもっさ食べながら、

「うまっ!ごっさうまっ!めっさうまっ!」

嬉しそうにそう叫んだので土方はホッと息をつく。

「まじでか。どれどれ……」

初・手作りケーキを味見しようと土方が手を伸ばすが、銀時がさっと取り上げてしまった。

「あげませんんんん!」

「なんでだよっ」

「多串くんが作ってくれたんだから一欠けら残さず俺のもんですぅぅぅぅ! 多串くんは俺の作ったやつでも食ってろ!」

嬉しさのあまり暴言を吐く銀時に、土方も嬉しいような憎たらしいような気持ちになる。

仕方ないので言われたように持ってきた銀時のケーキを食べるが、やっぱり自分の作ったものが気になったので、

「おい。なんか喉渇く」

「ん?お茶でいいか?それともいちごぎゅ……」

「茶でいい」

飲み物を頼んで銀時が台所へ行った隙に、さっとつまみ食い。そして眉間にシワを寄せた。

『甘っ!……つーか……食えなくはねーけど……なんか……』

生地もクリームも舌触りが悪いし、銀時の作った物と比べ物にならない。

「はいよ。……? どうした?」

「……別に……」

お茶を運んできた銀時が不機嫌そうな土方に首を傾げる。

あまりケーキなど食べない土方でも味の差が分かるのだから、銀時が分からないはずがない。となれば、良く言えば土方に気を使っている、悪く言えばお世辞だった、ということだ。

『なんだよ、マズイならマズイって言えよ。んなことで気ぃ使われても嬉しくな……』

らしくない態度に文句を言ってやろうかと隣を見ると、座るなりケーキを頬張り始めた銀時が、すごくすごく嬉しそうな顔をしている。

気を使ってる素振りなんか少しもない。

「美味いか?」

「うんっ」

「……そうか」

土方はやられっぱなしは気に入らないという程度で作っただけだったのに、銀時にはもっと大事な意味があったらしい。

バレンタインデー自体にはやっぱりなんの感慨もない土方だが、銀時が喜んでくれたのは嬉しく、ちょっと悔しかった。

『来年はちゃんと美味いもの作ってやんぞコラァ』

密かに決意をする土方だった。



 おわり



パクリだとは言いましたが……すみません、パクってるというものおこがましいです、はい。
“ごっさ嬉しそうな銀さんと、銀さんが嬉しいのが嬉しい土方”……思い出しても萌えます。
特に私の文章は説明少ないですからねぇ、ふわっと想像……できるかぁぁ!!(笑)
ともあれ、ハッピーバレンタイン!二人が幸せでありますように!(笑)

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ