原作設定(補完)

□その17
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「で?結局何もねーの?ホントに大丈夫か?」

実は心配していたのか、両手で頬に触れながら銀時に問いかけられて土方は小さく笑って言ってやったが、

「だから、占いなんて当たるわけねーんだって」

「…ん…」

まだ不安……というか、不満そうな顔をしている。

占いの話を聞いたとき銀時が笑い飛ばしてくれたから何度も大丈夫だと思えたのに、今更なにを考えているのか。

「どうした?」

「……初ちゅーの相手って誰?」

「なっ……何言ってんだてめー」

口を尖らせながらじっと見つめる銀時に、激しく動揺する土方。

「だってさー、もしかしてよ?万が一その婆さんが本物だったら、お前に何も起きてないってことは……初ちゅーの相手と結ばれちゃったりしちゃったりしてんじゃねーの」

は?ホントに何言ってんのコイツ、と思ってきょとんとしたのもつかの間、すぐにとんでもなく失礼なことを言われたのだと気が付いた。

つまり、あれから一月の間に土方が銀時以外の相手とイチャイチャしたんじゃないかと疑って、不機嫌な顔をしているのだ。

怒鳴りつけてやろうと思って言葉を飲み込む。

お前が居るのに他のヤツとヤルわけねー、とか、俺がそんなことをすると思ってんのか、とか、そんな言い訳を必要とする仲じゃない。

銀時から熱烈な告白を受け取っておきながら、のらくらとはぐらかして、それで優位に立っていたいのが本音だった。

バレないように怒りを落ち着かせる深呼吸をして、土方は銀時のおでこに強烈なデコピンを食らわせる。

「いったぁぁああ!!」

「んな暇どこにあったっつーんだコラァ!」

そして銀時の頬を両手でガッと掴むと、我ながら破壊力満点だったデコピンの跡をぺろりと舐めてやった。

「つまんねーこと考えてる暇があるんならさっさと来い。じゃねーと、忙しい俺は帰るぞ」

「えっ!? や、ちょ、ちょっと待ってっ!今すぐ、今すぐ行かせていただきます、はい」

大慌てでしょぼくれてた気持ちを盛り上げると、土方の背中に腕を回して抱き締める。

何とか誤魔化せたと、銀時からの口付けを受けながら土方は小さく溜め息をついた。

『初めてのキスは、素性も分からねー名前も知らねーどころか、顔も知らねー男に奪われたとか言えるかっ』

あの日、追っ手から逃げ切った数日後にあの町に戻ってみたのだが、それらしき子供の姿はなかった。

助けてもらったのに何も知らないまま、ちゃんと礼も言えないまま別れてしまったのだ。

それを今回のことで思い出し、気付いたことがある。

目の前のモフモフっとした頭を撫でてやると、銀時は顔を上げてにいっと笑った。

『…見た目は分からねーけど…にくたらしい口調とか……どことなくコイツに似てた気がする……』

銀時に聞かれたついでに初キスの相手を聞き返してやったのだが、

「俺?最初から最後まで玄人のお姉さんに捧げちゃったに決まってんでしょ」

とぬけぬけとそう言われた。

まあ素人の女性と手順を踏んでお付き合いして……とかいうより有り得そうで納得できた。

嘘をつく必要がないし覚えているなら話てくれそうだし、だからアレは銀時じゃなかったんだと思う。

『…んな漫画みてーな偶然あるわけねーし、やっぱり占いが外れただけだな…』





「え、おいっ、お前っ!」

集まっている人の間をぬってその場から逃げ出した“お前”の姿を見失って、“てめー”は拗ねるように言った。

「名前ぐらい教えてけよな」

「あなたの名前なら教えてあげられますよ、銀時」

背後からとても聞き覚えのある声で名前を呼ばれ、身体を固まらせる。

その声は逃げたことを怒っているようだったので、泥だらけの姿であることを利用し、

「人違いですぅ」

と誤魔化してみたのだが、それで誤魔化されてくれるような優しい人ではない。

「そうですね、そんな姿じゃ分かりませんね。じゃあ、洗ってらっしゃい」

にっこりと笑うと“てめー”の襟首を掴んでひょいと持ち上げ、そのまま紙くずでも投げるかのような手付きで隣を流れる川に放り投げた。

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

激しい水しぶきを上げたかと思うと、叫び声はあっという間に小さくなっていく。

一晩中降り続いた雨で川の水は増量、橋を破壊するほどの急流。故に“てめー”は泳ぐ間もなく流れて行ってしまったわけで。

「あっ、どこに行くんですかっ、銀時っ!!また私を置いていくなんて、酷い弟子ですねっ」

ぷんぷんと怒っている男に、

『どっちがぁぁぁあああ!?』

一部始終を目撃してしまった村人たちが内心でツッコミを入れていた。

そして10分後、1km下流の岸に偶然流れ着いた“てめー”はガクガクブルブルと震え、

「水怖い、水怖ぃぃいい!!」

泳げなくなってしまった上、追いついてきた男に“お前”のことを問われても、

「そう言えばあの子は誰なんですか?一晩一緒に?」

「あ?あの子?一晩?」

その晩のことをすっかり忘れてしまったのだった。





 おわり



……長くなったなぁ(笑)
仕事中に次の日の分を考えてるんですが、浮かんだセリフとかを追加したら、
どんどん長くなっていっちゃったんですよ。
最後に一文を追加したかったんだけど思いつかない……補完でなんとかします(笑)
過去に出会ってたネタはいくつかあったんで、一つ書けてよかったです。
名前を出さなかったせいで分かりづらくなってしまってすみません(笑)

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