原作設定(補完)

□その17
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銀時は困っていた。

ソファに座った神楽の隣で、チビトシがむす〜っとふくれっつらをしているからだ。その手には銀時の着物の裾が握られている。

「…ち、ちび〜、お土産にマヨ買ってくるから、な?」

「いや」

ご機嫌を取る銀時をきっぱり拒絶。二文字しか喋れないながらもいろいろ表現が増えて生意気になってきた。

今日は久々に土方から連絡があってデートの約束をしたのに、外出しようとする銀時がやけにウキウキしている様子に拗ねてしまったらしい。

「僕らが遊んであげるよ、ほら」

新八がチビトシが最近お気に入りのボールを取り出すと、パッとそちらを見るものの手は離さない。

「銀ちゃん、今日は諦めてチビトシと遊ぶアル」

「ぐ……でも……」

「仕方ないですよ。まずご飯食べて、チビトシと一緒にあげてください」

神楽と新八にそう言われて銀八は困ったが、むくれているチビトシの顔を見るとちょっと胸が痛んでしまい、

「……分かった」

そう呟くと、チビトシは現金にもすぐに笑顔になって手を離した。

可愛いチビトシのために今日は可愛い土方を諦めようかとしたとき、

「じゃあ銀さん、チビトシのマヨ持ってきてください」

そう言った新八が、チビトシに見えないように手で“行ってください”と合図をして寄越したのだ。

新八にしては洒落たことをする。

「わ、分かった」

騙すことは気が引けるが、三週間ぶりに大きい土方に会ってイチャイチャしたい銀時は、そう答えて台所に行くフリをしてこっそり万事屋を抜け出すのだった。




「…おい、どうした?」

声を掛けられて銀時は我に返る。顔を上げるとテーブルの向こう側で土方がおかしなものを見る目をしていた。

居酒屋で土方が使っているマヨを見たらチビトシを思い出してぼんやりしてしまったのだ。あの後戻ってこない銀時に怒っているだろうか、泣いているだろうか、そんなことを考えてしまう。

「え?なにが?」

「……調子悪いなら出てこないでも良かったんだぞ」

「やですぅ。今日を逃したら今度いつ会えるか分からねーのに」

心配しているのにチクリと責め返してくる銀時に、土方はムッとした顔をする。

“ああ、やっぱりチビトシに似てる”なんて思って銀時は笑ってしまい、それがあまりに嬉しそうだったから土方は少しドキリとさせられた。

チビトシも可愛いけれど、やっぱり土方が一番だなと再認識。




翌朝、ちゃんとマヨネーズを買って帰ってきた銀時だったが、

「ただいま〜」

とかけた声と同時に奥から猛ダッシュで走ってくる神楽と新八。

「銀ちゃんっ!!!」

「銀さんっ!!!」

「うわっ、なんだっ」

銀時の胸倉を掴んでガックンガックン揺らす神楽の隣で、新八がうろたえた様子で説明してくれた。

「銀さん!チビトシが外に出ちゃったみたいなんですっ!」

「あ?」



驚く銀時に、神楽が珍しく眉をハの字にした情けない顔をして言う。

「朝にはもういなかったネ。玄関がちょっと開いてたアル。銀ちゃん探して外にでたのかもしれないヨ」

小さくてもお徳用マヨネーズを自力で持ち上げられるぐらいなので、玄関の扉ぐらいなら開けることができた。

神楽は鍵を閉め忘れたことを申し訳なく思っているようだが、そもそもチビトシを置いて出かけた自分の所為だ。神楽の頭をぽんぽんと叩いてやる。

「家の中にはいないんだな」

「隠れられそうなとこは全部探しました」

「分かった。外見てくる。新八は近場を探してくれ。神楽は留守番、戻ってくるかもしれねーし」

「銀ちゃん、私の責任ネ。私も探すアル!」

「そんなに焦ってたら他に被害が出るだろうが(人をはねたり、車をはねたり)。定春と留守番」

きっぱり言われて自分でもやりかねないと分かっているのか、しょんぼりする神楽の代わりに定春が返事をする中、銀時と新八はチビトシを探しに外へ出た。


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