原作設定(補完)

□その17
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「おはようございま〜す」

翌日、新八が出勤してきてリビングの扉を開けると、ソファに座っている神楽が歌いだした。

「♪銀ちゃんが夜なべをして着物を縫ってくれた〜♪」

意味は考えなくてもすぐ分かった。行儀悪くテーブルの上に立ったチビトシが両手を広げてドヤ顔をしている。

どうやら銀時の手縫いらしい着物を着ているが、それは土方の私服と全く同じだった。

「ますます土方さんにそっくりですね」

新八に撫でられて嬉しそうなチビトシと、夜なべのせいか寝不足でぐったりしている銀時。

ぐったりしているのにはもう一つ理由があった。

昨夜から何度か坂本に連絡を取ろうとしているのだが、坂本はおろか陸奥とも繋がらないのだ。

銀時の悩みとは少し方向が違っているが、新八もチビトシのことで考えていることがあるらしい。

「…土方さんには教えなくていいんですか?」

「………う〜〜〜……」

それは銀時もちょっと考えた。

が、土方が喜んでくれるとはとても思えない。それどころか「捨てて来い」と言われる可能性もある。

「もうちょっと……詳しく分かってからにしようかと……思ってます」

「内緒で飼えばいいアル」

「飼う、って、ペットとは違うんだから」

チビトシを手に乗せたり“高い高い”をして遊んでいる神楽を、新八はハラハラしながら見守り、銀時は深く溜め息を付いたり。

そのとき、机の上の電話が鳴った。

「はい、万事屋銀ちゃんです……陸奥さん?」

電話に出た新八が呼んだ名前に、銀時が慌ててソファから立ち上がってくる。

「陸奥か?お前んとこのバカ社長居るか?…………あ?どっかの星に捨ててきた?」

頭が痛いというポーズを取る銀時に、新八と神楽はまたかという顔をした。坂本がそういう目に合っているのはいつものことだ。

「あのバカ、今度は何したんだ?…………え……」

「?」

急に真っ青になった銀時に二人は首を傾げたが、

「……へ、へえ………御得意様に納品するはずの“温めると好きなものが出てくる卵”を失くした………ふ〜ん……え!?いやいや、知らないよ、うん」

汗をかきながらシラを切る銀時と、チビトシを見つめて動悸が早くなる。バレたらどっかの星に捨てられるかもしれない。

「で、でも好きなものが出てくるっておもしろいな。何でも出るのか?……生き物とか……」

どうやら坂本を見つけるまで待てないため、なんとか陸奥から情報を聞き出すことにしたようだ。

「……へえ………でも、いつかは…消えちまうんだろ?」

本題に入ると新八と神楽も息を飲んだ。

まだ一日しか経っていないのに、目の前で不思議そうな顔をしているチビトシが居なくなるのが寂しかった。

だが陸奥から話を聞いたらしい銀時がきょとんとした顔をする。

「……え………そうか……うん、そうか……あ?ああ、バカによろしく」

そっと受話器を置いた銀時が口を開くのを緊張しながら待つ二人に、

「……卵から生まれたモノは、温めたヤツが死ぬか、心の底から“もういらない”と思えば消える……ってさ」

「銀さん!死なないでくださいねっ!!」

「……それ俺のために言ってるわけじゃないよね、違うよね」

「銀さんが土方さんにそっくりなチビトシを要らないと思うはずないし…」

「チビトシ、ずっとうちに居るアル!」

銀時が死なない限り、チビトシがいらないと思わない限り。

突然万事屋にやってきた新しいメンバーがずっと居てくれることを嬉しがる三人に、チビトシはにっこりと笑って言った。

「マヨ!」

「………腹減ったのね、はいはい」

慌てて朝御飯の用意をする三人だった。



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