原作設定(補完)
□その17
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三人で萌え〜と小さい土方を眺めていたが、銀時の手をかじっている顔が少し寂しげになっていくのに気がついた。
「もしかして、お腹が減ってるんじゃないですか?」
「……そういえば、朝飯がまだだった……」
新八に言われ銀時も急にお腹が空いてきた。
裸の小さい土方にとりあえず服の変わりにタオルをぐるぐる巻く。
それから家から持ってきたおかずで朝食を並べてみたが、問題は小さい土方だ。
「何を食べるアルか?」
卵から生まれた人型の生き物の食べ物なんて想像もつかない。とりあえずご飯を箸の先に少し乗せて差し出してみた。
くんくんと匂いを嗅いだあと、小さい土方は大きな口を開けてご飯を口に入れる。
「あ、食べた。……大丈夫そうですね」
嬉しそうな顔をしているのを見てほっとしながら少しずつご飯を食べさせた。
すると神楽が、
「マヨラに似てるならマヨネーズも食うかもしれないアル」
そう言ってマヨネーズを指先に乗せ小さい土方に上げてみる。
さきほどと同じように匂いを嗅いでぺろりと舐めたあと、小さい土方の目がキラーーッと輝いた。
そしてご飯よりも勢い良く一気にマヨネーズを食べてしまい、“もっと”とせがむような顔で神楽を見ている。
何度指先に乗せてやってもすぐに食べきってしまうので、小皿にてんこ盛りにしてやったらごっさ嬉しそうにマヨネーズを食べる姿に、
「……土方さんなんじゃないですか、これ」
と、新八に怖いことを言われても反論できなかった。姿形が似ていると味覚も似るものだろうか。
小さい土方がマヨネーズに夢中になっている間に、銀時たちも朝食を取った。
「……名前がないと不便ですよね……」
「定春42……」
「却下。んー……小さい土方だから、チビ土方とか……」
「呼びづらいですよ。だったら、チビトシのほうが良くないですか」
新八は単に近藤がそう呼んでいるから“トシ”と言ったのだろうが、いまだ名前で呼べていない銀時としては少し複雑だ。
だが他に無難な名前がないので小さい土方を“チビトシ”と呼ぶことにする。
「お前は今日から“チビトシ”アル!」
神楽が呼びかけると、チビトシは首を傾げて可愛い声で繰り返した。
「……ちび?」
「喋った!!」
「違うアルっ。“チビトシ”ネ」
「……ちび?」
「チービートーシ!」
「……とし?」
喋れることに驚いたが、神楽が何度教えても“ちび”か“とし”としか話そうとしない。
「もしかして、二文字しか話せないのかもしれないね」
「じゃあ、私は神楽ネ」
「かぐ」
「かーぐーら」
「…ぐらっ」
やっぱり二文字しか無理なようだ。卵から生まれた生き物だけに、それでも十分すごいことだった。
結局、“ぎん”、“ぱち”、“ぐら”と三人の名前を覚えたところで、チビトシは疲れてしまったのか眠ってしまう。
その寝顔に「可愛いアル〜」とはしゃぐ2人を見ながら、銀時は小さく溜め息をついた。
土方に似てるし可愛くて夢中になってしまったが、あくまでも天人の生き物だ。
愛着が湧いて手遅れになる前坂本に連絡を取って話を聞かなければ、と思いながら、
「銀ちゃん!見るアル!!」
神楽に呼ばれてチビトシを見ると、定春のもふもふの毛に包まれて気持ち良さそうに寝ている姿に、
『くっ……ごっさ可愛いっ!』
もう手遅れな感じに萌える銀時だった。
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