原作設定(補完)
□その17
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割れた卵の殻の中で丸くなって寝ているソレをじっと見つめていた銀時は、寝ているように見えるだけでもしかし生き物じゃないのかもしれないと思い、つっついてみようと人差し指をそーっと差し出したとき、ソレは目を開けてゆっくりと起き上がった。
眠そうな目できょろきょろ見回し、銀時を見つけるとじっと見つめ返してくる。
射殺されそうなほど鋭く綺麗な土方の眼差しこそないが、やっぱり土方にそっくりだった。
小さい土方は差し出したまま固まっている銀時の指先を見て、小さい手でぎゅーっと掴むと小さな口を大きく開けてかぶり付いた。
本人はかじっているつもりなのかもしれないが、歯を立てていないので指先はむず痒い感じがして、
『……がはぁぁっ!!可愛いぃぃぃっ!!』
銀時の萌えポイントを直撃。がじがじとかじる姿をそのまま見つめていたせいで、大きな子供が帰ってきたのに気付かなかった。
「銀さん、なんですかそれ、人形?」
「マヨラに似てるアル。銀ちゃん……キモいネ」
いつの間にか銀時の隣に立っていて2人を覗き込んでいる新八と神楽は、どうやら作り物だと思ったらしい。
経緯を知らないと確かに即座に理解するのは難しいと思うが、銀時がどう説明したらいいかとわたわたしている間に、呆れる神楽が差し出した手を銀時にしたのと同じように掴んでかぶりつく小さい土方。
生き物のように動いたソレに、ようやく2人とも人形ではないと気付いたようだ。
「ぎ、ぎぎ、銀さんっ!!どっから連れてきた!どっから盗んできた、コノヤロー!!」
「ちょ、ちょっと待て……」
「そんな子に育てた覚えはないネ!!」
「違っ…」
「まさか!!土方さんに隠し子が居ることを知って、ゆ、ゆゆゆゆ、誘拐……」
「人の話はちゃんと聞けやぁぁああ!!」
そう怒鳴って息を切らしている銀時に、2人はようやく口を噤んだが銀時を見る目が冷たい。
銀時は経緯を説明してやった。
卵のような大きな殻、見た目は2〜3歳だが人間の子供にしては小さいサイズ、そして坂本が関わっていること。
それを踏まえたら二人は納得してくれたようだ。
「じゃあ、これ“天人”ってことになるんですか?」
「…そう、なるか?」
これだけ土方に似ていると“天人”と言われるのには違和感があるが、人間でないことは確かだ。
微妙な顔をしている銀時と新八とは違い、神楽は指先をまだかじられながら嬉しそうだった。
「ごっさ可愛いアル!銀ちゃん、コレ、定春42号に……」
「……土方に似てるモンに定春って付けるのはやめてくんね?」
危うく神楽のペットにされそうなところを阻止するが、コレをどう扱っていいのか悩むところだ。
人間とサイズは違っていても、顔、髪、身体も全部人間そのもので……。
「……ハッ!! お前ら、見ちゃダメだぁぁああ!!」
銀時は慌てて裸のままの小さい土方の下半身を隠すが、もちろん手遅れだった。
「そんなちっちゃいち○こ見たってなんとも思わないアル」
「神楽ちゃん、女の子がそんなこと言っちゃダメだから」
そして、目の前に現われた銀時の手にまたがぶりとかぶりついている小さい土方を見て、
「……可愛い」
「可愛いアル」
「可愛すぎるっ!」
メロメロになる三人だった。
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