原作設定(補完)

□その17
10ページ/40ページ

#163

作成:2015/12/27




坂田銀時はイライラしていた。

つき先ほどぷらぷら歩いていたら“真選組の瞳孔かっぴらき味覚崩壊ニコチン中毒野郎”に会ったからだ。

銀時の顔を見るなり、相変わらず暇そうだ、だの、ちゃんと働け社会のゴミ、だの、糖尿でどっか爆発して死ね、とか散々なことを言われた。

そこまで言われたのは銀時がそれなりに応酬したからこそだったが、自分のことは棚上げで腹立たしいものだ。

こんなときは腹いっぱい糖分を取りたいのだが、あいにく懐にはそれぞれ家庭の事情というものがあるもので、一本しか注文できなかった。

それをガツガツ食べていると、

「旦那、そんな難しい顔して食べてたら消化に悪いですよ」

そう声をかけてきた“カモ”山崎。珍しいことに沖田と一緒だ。

さっそくセコイ脅迫を実行することにした。

「誰のせいだと思ってんですか。オタクの副長さんが市民を不快にさせてるって通報してやろうかコノヤロー」

「ええっ、それだけは……」

「黙っていて欲しくば団子奢れ」

「俺がですか〜?」

「俺が奢ってやりまさぁ」

銀時が不機嫌だということは、土方も今頃相当不機嫌で居るかと思うと愉快な沖田が、嬉しそうな顔で申し出てくれる。

ついでに自分たちもお茶をすることにしたようで、三人でのんびり団子をつまんだ。

「それにしても…副長さんさ、あんなに短気で大丈夫なの?大変だね、オタクらも」

「毎回毎回、土方さんを怒らせてるのは旦那だけでさぁ」

「そうなの?」

「副長は好きな人の前だと緊張して態度と口が悪くなりますからねー、ははは」

「……あ?」

普通の世間話のつもりでぺろっと山崎が言ったセリフに、銀時が眉間にシワを寄せて反応した。

これは誤魔化せそうにないしそのほうが面白いと思った沖田が、気付いていない山崎にポツリと予言を下す。

「……山崎ぃ。お前、切腹だな」

「ええ?……………ハッ!! ああああぁぁぁぁ!!」

30秒前の自分の発言を反芻したことでようやく失言に気付いた山崎が、顔色を青、白、赤と変化させながら銀時に泣き付いた。

「だ、だ、旦那ぁぁ!聞かなかったことにしてくださぃぃ!」

聞き返したものの銀時も言葉じりを素直に受け取ったわけではないのに、山崎のうろたえ方を見て確信へと変わる。

さらに深いシワを眉間に刻み、ズバリ問い掛けた。

「……アイツ、俺が好きなの?」

「そうなんですっ!!素直じゃなくて照れ屋なだけで副長なりに本当に旦那のことが好きなだけなんですっ!! あ……」

よほどテンパっていたのだろう、山崎はさらに余計な口を滑らせた。

「……切腹確実」

「ぎゃぁぁぁああ!!」

断末魔の叫び声を上げる山崎を哀れそうに見つめる沖田を余所に、銀時は口を尖らせて首を捻る。

確信が持てても、思い出す土方の態度からはソレを感じさせるものが無さすぎた。




「どうした、山崎」

とぼとぼと屯所に帰ってきた山崎は、早速土方に遭遇してしまう。

元気がない様子に優しい声をかけてくれる土方だったので、半泣きで怯えながら自白しようとする山崎だったが、

「は、はは、はいぃぃぃ!あの、そ、それがっ……」

「昼に食った団子が当たったようで腹が痛いそうでさぁ」

「……とっとと厠に行ってこい」

沖田のフォローに、呆れた顔でそう言って立ち去る土方。

それを呼び止めようとする山崎を、沖田が止める。

「あ、あの…」

「いいから黙ってろぃ」

「でもぉ」

「そのほうが面白いことになんだろ」

にやぁと楽しそうな笑みを浮かべる沖田に、”怖いことになる気がするけど、正直に言うのも怖い!“と山崎も口を噤むしかなかった。



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ