原作設定(補完)

□その17
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#168

作成:2016/01/06




万事屋の和室で銀時は深い溜め息をついていた。視線の先には手で持った薄い封筒。

仕事ない、金ない、ギャンブル運ない、の銀時が、かぶき町の商店街で開かれた福引に当たったのだ。

しかも、特賞・温泉旅行二泊三日二名様、お年玉付き。

旅行券が入った封筒を手に難しい顔をして唸っていると、玄関の扉が開いて駆け込んでくる複数の足音があった。

神楽と新八は部屋に入るなり叫んだ。

「銀ちゃんっ!!旅行が当たったってマジアルか!!」

「な、なんでそれをっ!」

「かぶき町内に知れ渡ってますよ。借金の替わりに取り上げようって争奪戦まで起きてます」

「…くっ……がめついヤツらめ」

借金を返さない自分のことは棚に上げて顔をしかめる銀時のところに、2人が駆け寄ってくる。

「私と一緒に温泉行くアル!!美味しいもの食べるネ!!」

「なんで2人なんですかっ!それより換金してみんなで美味しいもの食べたほうがいいでしょうがっ!」

「新八に美味しいものなんて贅沢アル!おまえは姉御の卵焼きでも食べてれば良いネ!!」

「酷いこと言うなぁぁ!!」

本気で喧嘩を始める二人に、銀時は困った顔をしながらもきっぱりと言い切った。

「無理。これ銀さんが使うから」

「なんだとっ!!ズルイアル、ズルイアル、ズルイアル!!」

「旅行行きたいんですか、銀さん」

「……ひ、土方くんと行く」

ちょっと照れながらそう言った銀時に、二人は想像を巡らせてから呆れた顔をする。

「無理ね、銀ちゃん。マヨラが行けるわけないアル」

「そうですよ。デートだってキャンセルされるのに、二泊三日とか無謀です」

「そ、それでも誘ってみるんですぅ。年末年始ずっと忙しかったんだぞ……たまには温泉とか行かせてやりてーだろーが」

2人でイチャイチャしたいからかと思いきや、姿を見かけるたびに疲れていくような土方を休ませるため、だと言う銀時。

土方が万事屋に来るたび大量のお土産を受け取ってる二人としては、“土方のため”と言われると反対しにくい。

「……分かったアル。じゃあ、マヨラが行けるっていうなら銀ちゃんが使っていいアル」

「まじでか!」

「土方さんが行けないときは換金ですからねっ」

「私と銀ちゃんで旅行アル!!」

2人が白黒つけるためにも、早めに土方に確認したほうが良さそうだ。

実はずっと電話するかどうかを悩んでいた銀時だったので、思い切って電話に手を伸ばし土方の携帯番号を回す。

2人がじっと見つめる中、コール音が5回、6回、7回と鳴り、留守番電話に切り替わった。

「……出ねーわ……」

がっかりしながら受話器を置く銀時に、2人が仕方なさそうに答える。

「しょうがないアル。今日中に電話して聞くネ」

「明日まで保留ですね。じゃあ、僕はそろそろ帰ります」

「あ、私も定春の散歩に行くアル!」

帰ってきたときと同じくばたばたと部屋を出て行く2人を見送り、銀時は再度溜め息をついた。

ああは言ったものの、確かに土方が三日間の休みを取れる……取ってくれる確率は低い。

先月の半ばからずっと忙しい土方は、町で見かけるたび、テレビに映るたび、疲れた顔になっていった。

ぎゅっと抱き締めてぐっすり眠らせてやりたいと思うのに、土方が万事屋にやって来ないとそれもできない。

無謀だと分かっていても誘ってみるぐらい試してみたかった。




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