原作設定(補完)

□その17
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#165

作成:2015/12/30




薄暗い見慣れぬ部屋のベッドの上から足を下ろした土方は、身体のあちこちに走る痛みに顔をしかめる。

「……っ……」

息を止めて堪えたあと、背後にチラリと視線を向けた。背中を向け小さな寝息に合わせて揺れる銀色の髪。

ずっと触れかかったその髪に、肌に、触れた先刻までの自分を思い出し、土方は頬が熱くなる。

ベッドを揺らさないように静かに立ち上がると、床に落ちている着物を拾い素早く身支度を調えた。気付かれないようにそっと。

起すのが嫌だ。起きて、

「ほら、あれ、酔った勢いってヤツ?お互い女子供じゃないしさ、犬にでも噛まれたと思って忘れてくんね?」

そう言われるのが嫌だ。銀時にはそうでも、土方にはそうじゃなかったから。

部屋を出る前にもう一度振り返る。

身体以上に痛む胸を抑えて、部屋を出た。




静まりかえった真夜中の道を、ふらついた足取りで進む。あの場は必死に我慢したけれど、本当は歩くのも辛かった。

身体も心も、痛むのは自業自得のことなのにと、土方は自分が情けなくなる。

このまま屯所に帰っても夜勤の隊士たちにみっともない姿を見せることになると思い、途中で見つけた公園への階段をふらふらと下りてベンチに座り頭を垂れた。

熱く火照った身体が冷めていくのと同時に、しでかしてしまった自分の気持ちも冷静になっていく。


初めて剣を交えて負けたとき、銀時の持つ光に惹かれた。

そのとき感じた光は普段の銀時には微塵もないどころか、人として嫌いなタイプであるはずなのに思いは薄れることなく、口喧嘩ばかりだったのをなんとか酒を飲むようになるまで持っていく。

ときたま一緒に飲んで友達みたいに話をできるだけでいい。そう思えていた時間はさほど長くなかった。

もっと近くに居たい。特別に思って欲しい。

そんな我欲のために、タダ酒だと言ってベロベロになるまで銀時を酔わせ、多少はあるだろう好意とご無沙汰だろう性欲を煽って、誘惑した。

触れて抱き締められて口付けられ。罪悪感で苦しくなりながらも、嬉しいと思う浅ましい自分。



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