原作設定(補完)

□その17
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#162

作成:2015/12/24




「副長、お疲れ様です!」

「……おう……」

深夜、屯所に戻ってきたところを隊士が出迎えるが、土方は返事をするのがやっとの状態だった。

政府のお偉方が“クリスマスパーティー”などと浮かれた行事に参加するため、護衛を命じられてようやく帰ってきたところだ。

それじゃなくても年末年始のための連日激務の最中だったのに、“土方は絶対に寄越せ”などと命令されて出向いてやればご息女のご機嫌取りをさせられるハメになったり。

『なにがクリスマスだ。俺たちは侍だぞっ。そんなもんに浮かれてるヤツは切腹だコラァ!』

イライラしながら真っ直ぐ副長室に向かう。

とにかく今は休みたい。

仕事はまだまだ残っているがまともに頭が働きそうにないし、2、3時間でいいから眠りたい、と部屋の襖を開けて、眉間に刻んだシワが更に深くなった。

暗い部屋の片隅に、赤と緑が主体のカラフルな、クリスマスカラーの大きな箱が置かれていた。大人が一人入れそうな大きさだ。

「………」

土方はぎゅっと目を閉じていろいろ自分を抑えると、そのまま部屋に入る。

明かりを点けて、手早くいつもの着物に着替え、布団を引く。そしてまた明かりを消して、布団に潜り込んだ。

5分もしないうちにうとうとし始めたところへ、バコッと鈍い音と叫び声の邪魔が入った。

「無視すんなぁぁああ!悲しくなるだろうがぁぁああ!!」

箱の中から銀時が切ない叫びとともに飛び出したのだが、

「うるせ、眠いんだよ。邪魔すんな」

土方はそれをばっさりと切り捨てる。

起きるどころか顔も見せようとしない土方に、銀時は口をとがらせながら箱から出て来ると、そそくさと目の前の“据え膳”に潜り込んだ。

それを追い出す労力も、文句を言う気力もないようで、土方は目を閉じたまま黙っている。

整った顔に似合わない眉間のシワと目のクマに、小さく溜め息をついて銀時は土方の身体をぎゅーっと抱き締めた。

さすがに苦情が出て、

「てめー……ここ(屯所)でふざけたマネする気じゃ…」

「しませんよ。多串くん、声我慢できないしぃ、誰か踏み込んできたら困るふぅっ!」

腹を拳で殴られた。

「邪魔すんなって言ってんだろーが。てめーと遊んでる暇はねーんだよ」

疲れた声でそう言われ、改めて土方の身体を抱き直して背中をぽんぽんと叩いてやる銀時。

「分かってますぅ。だから“安眠抱き枕”が出張してきてやったんだろうが」

何もかもお見通しの銀時に土方はようやく目を開けて、してやったりという顔を見つめた。

土方は昔から熟睡するのが苦手だった。家出しているときからずっと、辺りの様子に気を張り、ちょっとした物音で目を覚ますようになっていた。

真選組になってからは尚更で、それが普通になっていたのだが、銀時と付き合うようになって初めて“寝坊”をした。

起されるまで熟睡したいたことに気付かず、あやうく朝の会議に遅刻しそうになったのだ。

“銀時と一緒だと熟睡できる”という事実は、土方にとって情けなくて恥ずかしくて、そしてちょっとだけ嬉しいことだった。

今の睡眠不足と疲れを癒すために銀時に会いたいと思っていたところだったので、今日の押しかけプレゼントは正直助かる。

土方は“安眠抱き枕”に抱きつくと、

「ヘンなとこ触ったら殺すからな」

物騒な言葉を呟いてもう一度目を閉じた。

「はいはい」

素直じゃないがとても喜んでくれたようなので、銀時は満足そうに笑って抱き締め返してやる。

ケーキもご馳走もない味気ないクリスマスだが、お互い一番欲しいプレゼントを貰って聖なる夜を安らかにすごすのだった。



 おわり



すごい前に考えていた話でしたが、これをリアルタイムで書くことになるとは。
2人が幸せでイチャイチャしてくれたら私も幸せです。
たとえクリスマスイブにこんなもの書いてて、夜は仕事にだろうとも(笑)

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