原作設定(補完)
□その16
16ページ/21ページ
翌日も引き続きの猫探し。手分けすることにしたため一人歩いていた銀時は、駄菓子をくわえてプラプラ歩いて来る沖田に遭遇した。
「はんがぁ、ほほあはりへふろい…」
「分かんないよ、沖田君」
「もぐもぐもぐ、ごっくん……旦那、この辺で黒い猫見ませんでしたかぃ?」
「あー?それはこっちが聞きてーよ」
さっぱり見つからない猫に不機嫌そうな返事をした銀時に、沖田はきょとんとした顔をする。
「え?土方さんのこと知ってるんですか?」
「え?土方君がどうしたの?」
「………」
「………」
留守番の土方(猫)はしょんぼりしていた。
昨夜銀時に“可愛がってもらい一緒に寝た”(そのままの意味)ことで、元に戻れたりしないかなぁという淡い期待をしたのだが、起きても猫のままだった。
『早く元に戻りてー……屯所がどうなってるのか気になるし……それに……』
昨夜の銀時の声とぬくもりを思い出すと胸が苦しくなる。
電話をすることもできないし、ちょっと抜け出して屯所を覗きに行こうかと思ったとき、玄関が開いて陽気な声が聞えてきた。
「たっだいま〜♪」
ガサガサと音を立てながら帰ってきた銀時はソファに座って、向かい側の猫に話しかける。
「探してた猫が見つかってさ〜、依頼料をたんまり貰ったから……お前にも豪勢なメシ買ってきてやったぞっ」
そう言ってモ○プチの蓋を開けると缶のまま猫の前に置く。くんくんと匂いを嗅いで、
『…旨そうな匂いはするけど、やっぱり食う気はしねぇな…』
なんて思っていると別な方から良い匂いがしてきた。
銀時が白いプラ容器を次々テーブルに並べていて、そこから漂ってきたようだ。
ソファからぴょんと飛び移り、容器の匂いを嗅ぎ出す猫に銀時が非難がましい声を上げる。
「おいぃぃ、そっち食いなさいよ。ちょっと奮発した高ぇヤツなんだぞ、それ」
そうは言っても土方にはこっちのほうが気になる。おそらく、焼き鳥とから揚げと焼きそばの臭いだ。
最後にビールを取り出し、
「一人で飲むんなら、これで十分だよなぁ。いっただきまっす」
そう言ってグイッと飲んでからプラ容器を開けると、中身は3つとも大正解。
ずっと“ねこまんま”を食べていた土方(猫)だったので、ひさしぶりのこってりした味付けの匂いに思わず、
「ニャーニャー」
と鳴いてねだってしまった。
「あ?こっちがいいのかよ……しかたねーなー」
察した銀時が焼き鳥のひとかけらを取ってくれて、いい感じに温かったので『うめぇぇええ』と一気にガツガツ食べた。
次は脂っこいものが欲しくなり、から揚げの前で「ニャー」と鳴くとそれも半分に割ってくれて、こっちは少し熱かったがやっぱり一気に食べてしまった。
締めには大好物の焼きそばも食べたい。
「ニャー」
「これも食えんの? 猫も雑食なんだなぁ」
そう言って銀時は小皿を持ってくると、それに一塊乗せてくれた。
久し振りのソースの味に満足しながら食べていた土方(猫)だったが、だんだん何か物足りないような気がしてきた。
そう、土方が三度の飯……を黄色く染める万能調味料、マヨネーズ。焼きそばにはやっぱりアレがないと、と思ったら急に食欲が落ちていく。
もそもそと食べていると目の前に、滑らかな曲線が美しいマヨリン印のマヨネーズが現われた。
『マヨリンっ!』
背中と尻尾の毛を逆立てて興奮する土方(猫)に、頭上から声がかけられる。
「欲しい?」
見上げるとマヨに手を置いた銀時がにや〜っと笑っていた。
「かけて欲しいでしょ、“土方くん”」
『バレたぁぁああ!!?』
.