原作設定(補完)

□その16
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翌日も引き続きの猫探し。手分けすることにしたため一人歩いていた銀時は、駄菓子をくわえてプラプラ歩いて来る沖田に遭遇した。

「はんがぁ、ほほあはりへふろい…」

「分かんないよ、沖田君」

「もぐもぐもぐ、ごっくん……旦那、この辺で黒い猫見ませんでしたかぃ?」

「あー?それはこっちが聞きてーよ」

さっぱり見つからない猫に不機嫌そうな返事をした銀時に、沖田はきょとんとした顔をする。

「え?土方さんのこと知ってるんですか?」

「え?土方君がどうしたの?」

「………」

「………」




留守番の土方(猫)はしょんぼりしていた。

昨夜銀時に“可愛がってもらい一緒に寝た”(そのままの意味)ことで、元に戻れたりしないかなぁという淡い期待をしたのだが、起きても猫のままだった。

『早く元に戻りてー……屯所がどうなってるのか気になるし……それに……』

昨夜の銀時の声とぬくもりを思い出すと胸が苦しくなる。

電話をすることもできないし、ちょっと抜け出して屯所を覗きに行こうかと思ったとき、玄関が開いて陽気な声が聞えてきた。

「たっだいま〜♪」

ガサガサと音を立てながら帰ってきた銀時はソファに座って、向かい側の猫に話しかける。

「探してた猫が見つかってさ〜、依頼料をたんまり貰ったから……お前にも豪勢なメシ買ってきてやったぞっ」

そう言ってモ○プチの蓋を開けると缶のまま猫の前に置く。くんくんと匂いを嗅いで、

『…旨そうな匂いはするけど、やっぱり食う気はしねぇな…』

なんて思っていると別な方から良い匂いがしてきた。

銀時が白いプラ容器を次々テーブルに並べていて、そこから漂ってきたようだ。

ソファからぴょんと飛び移り、容器の匂いを嗅ぎ出す猫に銀時が非難がましい声を上げる。

「おいぃぃ、そっち食いなさいよ。ちょっと奮発した高ぇヤツなんだぞ、それ」

そうは言っても土方にはこっちのほうが気になる。おそらく、焼き鳥とから揚げと焼きそばの臭いだ。

最後にビールを取り出し、

「一人で飲むんなら、これで十分だよなぁ。いっただきまっす」

そう言ってグイッと飲んでからプラ容器を開けると、中身は3つとも大正解。

ずっと“ねこまんま”を食べていた土方(猫)だったので、ひさしぶりのこってりした味付けの匂いに思わず、

「ニャーニャー」

と鳴いてねだってしまった。

「あ?こっちがいいのかよ……しかたねーなー」

察した銀時が焼き鳥のひとかけらを取ってくれて、いい感じに温かったので『うめぇぇええ』と一気にガツガツ食べた。

次は脂っこいものが欲しくなり、から揚げの前で「ニャー」と鳴くとそれも半分に割ってくれて、こっちは少し熱かったがやっぱり一気に食べてしまった。

締めには大好物の焼きそばも食べたい。

「ニャー」

「これも食えんの? 猫も雑食なんだなぁ」

そう言って銀時は小皿を持ってくると、それに一塊乗せてくれた。

久し振りのソースの味に満足しながら食べていた土方(猫)だったが、だんだん何か物足りないような気がしてきた。

そう、土方が三度の飯……を黄色く染める万能調味料、マヨネーズ。焼きそばにはやっぱりアレがないと、と思ったら急に食欲が落ちていく。

もそもそと食べていると目の前に、滑らかな曲線が美しいマヨリン印のマヨネーズが現われた。

『マヨリンっ!』

背中と尻尾の毛を逆立てて興奮する土方(猫)に、頭上から声がかけられる。

「欲しい?」

見上げるとマヨに手を置いた銀時がにや〜っと笑っていた。

「かけて欲しいでしょ、“土方くん”」

『バレたぁぁああ!!?』



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