原作設定(補完)
□その16
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夜になり、ソファでうとうとしはじめた神楽が目をこすりながら立ち上がった。
「…銀ちゃん……おやすみアル……ZZzz」
「おい、コイツどうすんだ?」
銀時はソファの隣に座っている猫を指差した。寝ているわけではなく、一緒にテレビを観ているかのようにずっと座っているのだ。
身体は猫でも猫のように始終寝ていることはできないらしく、他にやることもないので土方(猫)は本当にテレビを観ていた。
すぐ隣に会いたかった男がいるのに、何も言えないし何もできないのはなかなかツマラナイ。
神楽は猫を見ると真面目な顔で答えた。
「…私と一緒に寝たらキケンアル」
「………おやすみ」
以前神楽に聞いた“笑えない笑い話”を思い出し、銀時は文句は言わずに見送った。
そして自分を見上げている猫の頭をグリグリと撫でてやる。
ふわっとした暖かい感触に銀時は眉を寄せた。実を言うと動物は苦手だ。小さくて弱くてすぐ死んでしまうモノは怖い。
銀時が手を離してまたテレビに視線を向けると、土方(猫)もテレビを観る。
『…煙草…吸いてーな…』
体内にニコチンは残っていないのようでイライラするということはないが、手持ち無沙汰というやつでそんなことを考えていると、テレビを見つめたままの銀時が呟いた。
「……そいや、いっつも前日には一回電話くれんのに……今日はなかったな……」
土方にもちゃんと非番の日は決められているが、予定の変更が多いため前日に一度電話をするようにしていた。
しかし今回は当の土方はここ(万事屋)に居るのだから、当然電話することができるわけもない。
「……明日は無理…かな……」
そう言ってため息を付いた銀時に、土方(猫)は申し訳なくて…そして嬉しかった。
明日までに元に戻れなければ当然会えないのは寂しいが、銀時があんな風に残念がっているのを始めて知ることができた。
会えなくなってもがっかりしているのは自分だけだろうと思っていたのに。
嬉しくて顔が赤くなっているのもこの姿ならば気付かれないだろうと、初めて猫で良かったと思った。
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