原作設定(補完)
□その16
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『見つかった!? ……って……“アル”?』
恐る恐る振り向くと、神楽が嬉しそうな顔をして立っている。なんでこいつが俺を探しに?と思ったのだがそうではなかったようだ。
「銀ちゃ〜んっ、捕まえたアル!」
「お〜、よくやったよ神楽ちゃんっ」
わらわらと集まってきたのは銀時と新八で、その手には写真が一枚握られていた。
「おしっ、カトリーヌちゃん発見、依頼完了っ」
並べて見比べた写真をチラリと見ると、不細工な顔をした黒猫がおすましポーズで写っていた。
どうやら猫探しの依頼を受けていたらしい。
今の自分の姿を確認していなかったが『こんな姿!?』と小さくショックを受けていると、
「……あの〜……違う猫じゃないですか?こんなキリッとした顔してないと思いますけど……」
新八が首を傾げて似ていないことを教えてくれたが、銀時は吐き捨てるように言った。
「似たようなモンだろ。大丈夫、気付かねーから」
「そうかなぁ」
「細かいこと気にすんじゃねーアル、だからお前は新八ネ」
「“だから”ってなんだ、“だから”ってっ!」
新八は言い包められてしまったが、依頼主の所へ行けば当然、
「違うざますっ!うちのカトリーヌちゃんはもっと愛らしい顔をしているざますっ!」
と、見抜かれてしまうわけで。
リテイクを食らった三人は依頼主の家の前にしょんぼりと立ち、土方(猫)を地面に下ろした。
「ほら、もういいぞ。自分の家に帰れ」
偽物ならば用はないと放り出したが、猫はひらりと戻ってきて銀時の着物の裾にぶら下がった。
屯所には帰れない。いつ元に戻るから分からないのでは外にもいれない。となれば、ここは万事屋の家にかくまってもらうのが最善の手だ。
なんとしても連れて帰ってもらおうと必死にしがみ付く土方(猫)に、
「なんだコイツっ。こらっ、離れなさいよっ」
「銀ちゃんが気に入ったんじゃないアルか?」
「連れて帰りましょうか?」
「ちょ、冗談じゃねー。うちには無駄飯食らいが一匹と一人居るんですからねっ」
「一人って誰のことだぁぁ!!」
銀時と新八がぎゃーぎゃー言っている間に神楽が猫を抱き上げ、連れて帰る気満々の顔をしている。
ここは神楽に気に入られたほうが得策かと、土方(猫)はちょっと擦り寄ってみた。
「ごっさ可愛いアルっ。銀ちゃん、私ちゃんと定春56号可愛がるネっ!」
「おいぃぃぃぃ!!名前付けるの早くねっ!?しかも56号って…フンコロガシ(28号)の間に何飼ってたのっ!?」
「まぁまぁ、銀さん。無理矢理連れて来ちゃったのは僕らなんですから、しばらく世話してあげましょうよ」
「……ちっ、しょうがねーな。ちゃんと自分で世話すんだぞっ」
「分かったネ、かーちゃんっ」
嬉しそうに猫を抱えて浮かれる神楽に、ホッと息をつく土方だった。
「ほら、お前も食べるアル」
万事屋に帰ってきた三人と一匹。神楽がさっそく定春の餌と一緒に、小さい皿を置いた。
「神楽ちゃん……それ、定春のドッグフードじゃないの」
「そうアル。似たような物ネ」
「…そうかもしれないけど……ほら、なんか微妙な顔してるよ」
問題はドッグフードかキャットフードかではない。本来人間である土方はペットのドライフードに、どうにも食指が動かないのだ。
「贅沢言ってちゃ定春みたいに大っきくなれないアルよっ」
「いや、定春みたいに大きくなったら困るよ」
「あれじゃね?猫のご飯と言えば……」
そう言って銀時が持ってきたのは、ご飯に味噌汁をかけた…いわゆる“ねこまんま”というやつである。
皿に盛られた“ねこまんま”を食べるのは少し抵抗があったが、なにせ昨日の夜から何も食べていなかった土方(猫)は急激にお腹が空いてきた。
それに銀時の作る味噌汁は好きなので、ペロッと舌先で熱さを確認してから皿に口を突っ込んだ。
ガツガツと食べ始める猫に全員が嬉しそうな顔をする。
「ほらな、やっぱりコレだろ」
「じゃあ僕たちもご飯にしましょうか」
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