原作設定(補完)

□その16
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#159

作成:2015/12/05




「ぶえっくしゅんっ!!」

屯所の自室で土方は大きなくしゃみを一つついた。

「あー……風邪引いたかな……」

昨夜は張り込みで遅くまで外に居た上に雨も降ってすっかり身体を冷やしてしまった。事件が片付いて屯所に戻った途端に気がゆるんだのか、これで7回目のくしゃみだ。

「……明日はようやく非番だってのに……治るかな……」

溜め息をつきながらそれを願うが、うらはらに体調はどんどん悪くなっているような気がした。

頭痛、鼻水、くしゃみ、発熱、めまい……風邪の症状オンパレードで滅入っていると、ひょっこりと沖田が姿を見せる。

「土方さん、風邪ですかぃ」

「…あ〜……大丈夫だ……」

「風邪薬ありますぜぃ。よく効くって評判なんで飲んでさっさと治してくだせぇ」

「…おう、ありがとうな」

頭がぐらぐらして今は本当に藁にも縋りたい思いだった土方は、貰った薬を水と一緒に一気に飲み込んだ。

「はぁ……どんぐらいで効くかな……せっかく総悟がくれたんだし……………総悟?」

そこでようやく身近に潜む暗殺者の存在を思い出し、土方の叫び声が屯所中に響き渡る。

「うにゃぁぁぁあああああ!!!!」

その声に、近くに居た山崎が慌てて副長室に飛び込んでくると、

「副長っ!!? ……ふく……ちょう?」

土方の隊服の上で“黒い猫”がおろおろと動き回っていた。

「え?猫? ふくちょ〜、あれ〜?」

部屋に居るはずの土方の姿を探して室内をキョロキョロ見回していると、自分の肩越しに携帯片手にくすくす笑いながら猫の写メを撮っている沖田の気配を感じた。

“犯人は完全にこの人だ”と理解して納得すると、目の前の黒猫が土方だということになる。

「無様でさぁ、土方さん」

「ぶぎゃぁぁぁぁ!」

「お、沖田隊長〜、どうするんですかコレェ。元に戻す方法は……」

「さぁ?土方さんでいろいろ試してみるしかねーかもし……」

「!! ふにゃにゃにゃぁんっ!」

「あっ!副長っ!どこ行くんですかっ!!」

沖田の微笑みに身の危険を察した土方(猫)は、開いていた襖から一目散に逃げ出した。

驚いた隊士たちに踏まれそうになりながらも屯所の建物、そして屯所の外へと抜け出し、追って来る姿がないことにようやくホッと息をつく。

沖田なら本当に動物実験的なことをやりかねない。

土方(猫)はトボトボと町の中を歩いていたが、誰も気に留める者は居なかった。牛や虎でなかったのが幸いと言える。

猫になったせいか、それとも本当に風邪薬の成分が入っていたのか、風邪の症状はなくなっていた。

これからどうしたらいいかを考えるため公園の芝生の上に座り、陽の光を浴びていたらぬくぬくして気持ちよかった。

『はぁ、猫も案外悪くな……ハッ!違う違うっ!』

現状に満足しそうなったのを慌てて気を取り直し考える。

元に戻るために薬などが必要な屯所に戻らないとダメだが、時間が経つと戻るという可能性もあるだろう。

このまましばらく様子をみようかと考えたとき、致命的なことに気が付いた。

猫になったとき畳の上には着ていた隊服が広がっていた。ということは……

『俺、今、裸かっ!!?』

自然に元に戻ってしまったら、町中人混みの中で“あは〜ん”ということになってしまう。ヘタをすれば露出狂の人として通報されるかもしれない。

『ど、どどど、どうしたら……』

「み〜つ〜け〜た〜…アル!」

動揺するあまり隙ができた土方(猫)の体を、何者かの両手ががっしりと掴まれた。


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