原作設定(補完)
□その16
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#152
作成:2015/11/25
きらめくネオン、回るパトライト、群れる見物人、包囲する真選組、立てこもる攘夷志士。
市中見廻りで怪しげな男達を発見し、隊士が詰問するとテンパって人質を取って籠城されてしまった。
攘夷志士とはいってもそう大きなことはできない程度の奴らだったが、人質がいるので手出しができないまま時間ばかりが過ぎていく。
「これは根競べだなぁ」
「…そうだな…」
近藤が隊士たちに指示を出すのを見ながら、土方は携帯を取り出す。大きく溜め息をついて“クサレ天パ”への通話ボタンを押した。
『はい、万事屋銀ちゃん』
「…俺だ…」
『おう。どうした?』
「…あー……今日の約束なんだけど……」
『仕事?』
「……たぶん……」
『………』
「……おい?……」
『別にいいけどさ……それ、50回目だかんね』
「……あっ!!」
あれは10回目のドタキャンの後、ぴったりと抱き付いた銀時にぶちぶち文句を言われた。
「まだ3月なのに今年のドタキャン10回目って有り得なくね?仕事大好きなの知ってるけどさぁ、銀さんだって……さ、寂しいんですけどコノヤローっ」
「……照れるなら言うんじゃねーよ」
「そこじゃねーからっ。ドタキャンを悔い改めなさいって言ってんですぅ」
「しょうがねーだろ。奴らが時間を選んでくれねーんだから」
「分かってますぅ。ちょっと拗ねるぐらい……あっ、だったら、俺にも楽しみがあれば良くね?」
「……なんだよ、楽しみって」
「んー、ドタキャン20回で土方くんからちゅーとか」
「なっ……」
「30回でナースのコスプレ、40回でフ○ラ……ぶふふふっ、そんなんだったら銀さんいくらでも待てちゃうんですけどぉ」
「だれがやるかぁぁああ!!」
「ぶぅぅ。ドタキャンに対する誠意ってもんはないんですか?」
「…ぐっ……め、飯は奢ってるだろうが……」
「それだけじゃあ癒されない……だったら、50回目!」
「…50……はねーだろ……いくら俺でも…」
「だから、万が一50回になったら、“何でも俺の言うことをきく”で手を打たね?」
「…………分かった」
「そんじゃ、あと40回〜♪」
そう言って嬉しそうに銀時は土方を抱き締めるのだった。
……というやりとりがあってから9ヶ月。
50回ドタキャンなんていくらなんでもないだろうと油断してたらいつのまにか40回を超え、ヤバイヤバイと思いながらとうとうその日が来てしまったのだ。
「や……たぶん、大丈夫だ。行けるからっ」
『ふ〜ん。ま、無理はしないでねぇ』
「う、うるせーっ。大人しく待ってろコラァ」
そう言って電話を切ってから12時間後、眩しい朝日に照らされながら連行されていく攘夷志士を見つめて項垂れる土方だった。
「な……何して欲しいんだよ……」
次のデートの日。万事屋にやってきた土方は、不本意と照れを混ぜたような顔でそう言った。
来なかったり誤魔化されたり、されても仕方ないと思っていた銀時は、真面目に直球で来た土方の“らしさ”に楽しそうに笑う。
「じゃ、こっち」
そう言って銀時が和室の襖を開けると、いつものように布団が敷かれていた。
もちろんソレありきのデートなのだが、今日はいつもと状況が違うため、土方は頬が熱くなり体中にいやな汗をかく。
黙ったまま和室に入ってこようとしない土方に、銀時は小さく笑って言った。
「座って」
普段二人きりのときにドSモードを発動させることはないが、今日は“何でも言うことをきく”というオプション付きだ。
承諾した自分とドタキャンを50回した自分を心の中で罵りながら、土方は悔しそうな顔で布団まで行くとぺたんと座る。
こうなったらなんでもやってやらぁコラァ!!
という気持ちだったのだが……。
「よい、せっ」
軽い掛け声とともに銀時は布団にころんと寝転び、土方の膝の上に頭を乗せた。
そして満足そうに笑う。
「……おい?……」
「んー?あ、頭なでなでしてくれていいよ」
「…………」
あっけに取られながら膝の上のモフモフを撫でてやると、銀時はくすくすと笑いながら目を閉じた。
きっといろいろやって欲しいこともやらせたいこともあったはずのなのに、困った顔をしている土方を見て“膝枕”なんてつまんないことに変更したのだろう、と思う。
50回のドタキャンを許してくれるところも、こういう優しいところも、土方にとっては逆に悔しい。
膝の上に乗ったままの銀時の頭を、後ろからアゴに手を当ててぐいっと自分の方に向かせ、そしてそのまま唇を重ねた。
負けず嫌いで、約束しなかったはずの“土方からちゅー”までやってくれる土方に、
“ごっさ可愛いっ、めっさ好きだっつーのっ!”
どんなにドタキャンされようが怒ったり嫌いになったりするはずがないと思う銀時だった。
おわり
#151で#150のフォローに失敗したので、再チャレンジしてみました。
即席だったので、ネタ的にはありがちなんですが、
ちゃんとイチャイチャできましたよね?(笑)