原作設定(補完)
□その16
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#151
作成:2015/11/24
銀時は机の上の電話をじっと見つめていた。
手元にあるのは今日発売のジャンプなのに、いつの間にか電話に気を取られてしまい全然集中できない。
「銀さん、今日はどうしたんですか? 何か依頼でもくる予定なんですか?」
新八がそう声をかけてみるが返事もなく、変わりにテレビを見ていた神楽が答える。
「今日だけじゃないネ。一昨日あたりからずっと電話ばっかり見てるアル」
「え、そうなの?そんな大事な電話なんですか、銀さん」
仕事が少ないながらも割と雑用で忙しい新八は気付かなかったようで、改めて銀時に聞き返すとようやく耳に届いたようだ。
「……あ?……何?……」
「だから、何か大事な電話がかかってくるんですか?、って」
「ばっ……大事じゃねーしっ!電話なんか待ってねーしっ!!」
銀時は焦り気味にそう叫ぶとジャンプを手に取り、椅子をくるりと回して背中を向ける。
そう言いながらも、しばらく経つとやっぱり電話を見つめている銀時に、新八はやれやれと肩を竦めた。
「やるアルかっ、この税金泥棒どもっ」
「警官侮辱罪で逮捕〜。おまわりさんの心はボロボロですぅ」
万事屋からの帰り道、姿を見つけるなり一触即発でにらみ合い怒鳴り合いになった神楽と沖田に、新八と山崎は溜め息をつく。
この二人を止めるのは至難の業で、とても自分ではできそうにない。
それは本来お互いの上司の役目なのだが、
「今日は土方さん一緒じゃないんですね」
「副長は忙しくてずっと屯所に引きこもり状態でね。そっちこそ旦那は一緒じゃないんだね」
「家に帰るとこなんですけど……銀さんがずっとぼんやりしてるんで、神楽ちゃんが鬱陶しがって一緒に居るの嫌だって言って」
双方が不在という厳しい偶然。
「ぼんやりって?具合でも悪いの?」
「いえ、元気そう……でもないですね。ずーっと電話を見つめてるだけなんです」
「電話? 何か大事な用事かな?」
「何も無いって言うんですけどね。そんなに大事なら自分から掛ければいいのに、素直じゃないんですよ」
神楽と沖田の大乱闘から目を反らして世間話をする二人だったが、
「新八ぃぃいい!!腹減ったアル!!こんなクソガキ相手にしてる暇はないアル!!とっとと帰るネ!!」
空腹に負けたらしい神楽が思っていたより早く切り上げてくれた。
「あ、はぁい。じゃ、これで」
怒りながら先に歩いて行く神楽を新八が追いかけるのを見送っていると、服の汚れを払いながら、
「山崎ぃ。今の話、土方さんにも報告しろよ」
沖田がそう言ってきた。
「え?何をですか?旦那の話しかしてないんですけど」
「それでぃ」
神楽と喧嘩をしていたはずなのに、新八との会話を聞かれていたのかと思うとちょっと怖い山崎だった。
「はぁぁあああ…………終わった……」
大きく息を吐きながら土方が背中から畳に倒れ込むと、ちょうど良いタイミングで山崎がやってきた。
完成した書類をてきぱきと片付けながら山崎が本日の報告をする。
どれもこれも大した話ではなく、何もなかったのならそれでいいと土方が新しい煙草に火を点けようとしたとき、思い出したように山崎は付け加えた。
「あ、そういえば……万事屋の旦那が電話のまえでぼーっとしてるって新八くんが言ってました」
「…………なんの報告だよ、それは」
「いえ。沖田隊長が報告しろって言うんで」
「……んなもん関係ねーだろ……」
「ですよね。それじゃ、ゆっくり休んでください」
山崎が部屋を出て行き静かになると、土方は舌打ちして点けようとした煙草を箱に戻した。
誰も知らないはずなのに、沖田がなぜあんな報告をさせたのかを考えると、疲れた身体に追い討ちを掛けられた様な気分だ。
働き詰めでずっとまともに非番も取れていないし、今日は山崎の言うようにゆっくり休むのが最良だったが、土方は携帯を手に取った。
万事屋に電話のベルが鳴り響……く前に、銀時が受話器を取り上げる。
「はいっ、万事屋銀……」
『…俺だ…』
「…うん」
ずっとずっと待ち続けた素っ気無い素振りの声に、銀時は嬉しそうに笑った。
おわり
終わりです(笑)
#150で可哀想な銀さんをフォローするつもりで書きはじめたのに、
全然イチャイチャできないどころか、会わないで終わってしまいました。
このあと会ってイチャイチャしてるはずなので、妄想してください(笑)