原作設定(補完)

□その15
13ページ/20ページ

#148

作成:2015/11/17




相変わらず暇そうな万事屋に突然の来訪者が現れたのはある日の午後。

チャイムもなしに玄関の扉を開けてズカズカ入り込んできた人物は、3人が文句を言う間もなくソファでくつろぐ銀時に歩み寄り、両手で頭を押さえるとそのままむちゅ〜〜〜〜〜〜っと唇を重ねた。

「!!!!?????」

驚いて青ざめる新八、神楽。声も出ない銀時。

例えば来訪者がさっちゃんだったりしたら「あ〜あ」と思うだけだったし、他の女性だったりら「えええ!?」と赤面したことだろう。

だが、銀時に圧し掛かって吸い付いているのは、真選組の隊服を着た土方十四郎だった。

「ぶはっ……ちょ、おまっ……何してくれちゃってんのぉぉおお!!?」

土方の身体を押しやりそう叫んだ銀時に、不満そうな顔をして再び伸ばした腕を首に回してぎゅーっと抱き付いているのは、何度見直しても土方十四郎で……。

「“おまっ、新八と神楽が見てんだろう。なに甘えてんだ、かわいいヤツめ”、“てめーがずっと放っておくからだろうが。寂しかった”アル」

「……銀さん……まさか、土方さんと……」

「神楽っ、勝手にアテレコしてんじゃねぇぇええ!!んなわけねーだろうがぁぁああ!!」

ぐいぐいっと土方の身体を押しながら面白がる二人に文句を言っているが、銀時が強く反論しても土方が冗談でこんなことをするとは思えない。

しっかり抱き付いている土方を横から覗き込んだ神楽が、

「……なんか変な顔してるアル……」

「え?」

そう言うので新八も土方を見ると、目の焦点が合っていないというかぼうっとしているというか。

「……なんか……目が虚ろだね……なんか、呪われてるみたいな……」

「おおお、おいぃぃいいい、やめろよっ、なんかアレ的なもの!?ちょ、離れてくんないっ!?」

銀時が震えながらそう叫んでいると、土方が開けっ放しにした玄関ドアからバタバタと入ってくる複数の足音があった。

土足でリビングに入るなり、ソファで銀時に抱き付いている土方に目をやる。

「やっぱりここに居ましたぜぃ」

「確保っ!」

「はいっ!」

帽子にサングラス、黒いコートを着た男達は、一人が土方に駆け寄り口元に白い布を当て、数秒後こてんと意識を無くした土方を一人が背負い、一人が威圧的な態度で銀時たちを見下ろした。

「見なかったことにしろぃ、分かったな」

そう脅すようなことを言われたが、変装しても丸分かりな声と見た目。
「ちょっと待てぇぇ!!お前らゴリとドS王子とジミーだろうがっ!どういうことだっ!!」

「ちっ、気付かれちまったんじゃ仕方ねーや。殺すしか……」

「おいぃぃ!!唇だけじゃなく命まで奪う気かぁぁ!」

懐に手を差し込みながら物騒なことを言う“ドS王子”に銀時が文句を言うと、

「じゃあ、ここはこれで」

“ジミー”が茶封筒を銀時に差し出した。

中から諭吉が3人出てきて、銀時たちはコロッと態度を変える。

「…俺たちは何も見なかった!」

「じゃっ」

帰っていく三人。残された三人。

“ゴリラ”に背負われた土方がどうしてあんな風になったのか、気にはなるがとりあえずお金も受け取ったことだし銀時たちは忘れることにした。

「銀さんの唇、意外と高い値がつきましたね」

「だなー。あの程度なら、また来てくんねーかな」

臨時収入に喜んでそんなことを言った銀時だったが……。



翌日、公園のベンチに座り遠い目をしている銀時を、行き交う人がジロジロと見つめている。

銀時の首には昨日のように土方十四郎がしっかりとしがみ付いていて、真選組の隊服を着ているだけに人々の視線は痛い。

このまま歩くことも出来ないし、抱きつかれているだけなのでいいかと我慢すること30分、沖田を先頭に数名の隊士がワラワラと駆け寄ってきた。

「旦那、何も言わずに受け取ってくだせぇ」

「……毎度」

封筒を受け取りながら隊士たちに連れていかれる土方を見送り、銀時は沖田に聞いてみた。

「なあ、アイツ、どうしちゃったの?」

「………聞かねーほうが身のためですぜぃ」

にっこり笑った沖田にそう言われては更に追求することもできない。銀時はため息をつきながら肩を窄めた。



.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ