原作設定(補完)
□その15
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#146
作成:2015/11/14
初めて会った時からずっとムカつく奴だった。
予想外のことをしてみせたり、胸に深く突き刺さることを言ってみたり。悪い奴じゃないだろうと分かっても、それとこれとは別だ。
顔を合わせれば喧嘩して、好きなモノも全然違っていて、絶対に相性が悪いと思っていた。
それが変わったのはたまたま一緒に酒を飲んだとき。
近藤さんたちが一緒だったから帰ることも喧嘩もできなくて、普通に隣に座って飲んだ。
そしたら意外と楽しくて、た〜まに一緒に飲むくらいならいいかな、と思っただけなのに、何故か休みのたびに飲むようになった。
「トシは今までそういう感じの友達が居なかったからなぁ」
万事屋とよく飲みに行くのを総悟に冷やかされたとき、近藤さんにそう言われる。
友達……友達か。
その言葉では何か足りないような気がするが、それが何かは考えないことにした。
考えたって無駄なような気がしたから。
そんな感じで万事屋とつるむようになり、喧嘩をするのにも一緒に酒を飲むのにも慣れた頃。
今日はいつもより飲んでいるなと思った万事屋が、店から出た後モジモジし出した。
なんだ?気持ち悪い。
「……どうしたんだよ……」
「…えっと……そのー……」
「てめーらしくねーだろ。はっきり言えや」
「……じゃ、言うけど……お、おおお、俺と……えっち、しませんか」
自分から言い出したくせに、言わされたかのようなちょっと拗ねたように万事屋がそう言った。
ああ、それだ。
ずっと考えないようにしていたモノ。俺は、コイツが欲しいんだ。
「…ふつ……どんな誘い文句だよ」
どうやら万事屋は相当緊張していたらしい。俺が笑ったのを見て、途端に安心したような顔になった。
「ど、どんな言い方でも意味は変わらねーし」
そういう不器用なところも可愛いと思うとか、開き直った自分がこえーな。
俺を返事を待っているようにちらちらと万事屋が見るから、言ってやった。
「……てめーは俺でいいのかよ……女どもが怒るんじゃねーか?」
「俺がモテねーの知ってるくせにぃぃぃ!」
それはコイツをよく知らない女が相手だからだ。
正義感とかないくせに面倒事に自ら巻き込まれ、ボロボロになるまで戦う万事屋に、みんな惹かれていく。
素直じゃなかったり、表現が下手だったりするだけで、みんなコイツが好きなんだ。
俺みたいに……。
黙ったままの俺を待つのが耐え切れなくなったのか、万事屋は少し寂しそうな表情で呟いた。
「…てめーは女に困ってねーだろーけどさ」
まあ、困ってはねーけど……
「……女は……面倒だしな」
「だろっ!?だから土方は女ッ気ないんじゃないかなって銀さん分かってましたっ」
超良い笑顔でそう言ってから、慌ててなんでもないような顔になる。
「だ、だからさっ、気持ちいくなるだけなら、男同士のほうが楽じゃん」
そんな言い訳付け足さなくても、その顔を見れば“それだけじゃない”のはバレバレだろ。
本当は聞きたいことも言いたいこともたくさんあった。
だけど……。
「……そうだな……」
俺がようやく肯定の言葉を口にしたから、万事屋は驚いてからまたもじもじとこれからの予定を話し出す。
「…まじでか……じゃない、だったらこのあとさ〜」
そんな一人ではしゃいだりヤキモキしている万事屋が面白いから、“俺もてめーと同じ気持ちだ”ってのはもうしばらく焦らしてから言ってやろうと思う。
おわり
ちょっと思いついたので書いてみたやつです。
やっぱり土方にメロメロの銀さんと、銀さんにメロメロの土方が好きだなぁ。