原作設定(補完)

□その15
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#142

作成:2015/10/22




真夜中、ふと目を覚まし、土方は傍らに居る銀時を見つめた。




告白、お付き合い。大の男が気恥ずかしくなるような段階を踏んで始まった二人の関係も、無事に“深いお付き合い”まで通過した。

どっちが上か下かでモメたりもしたのだったが、「あまりにもアイツが必死だから妥協してやった」とお情けで解決したと言う土方と、「違うから、土方くんが銀さんのテクに陥落しただけだから」と主張する銀時で喧嘩になったり。

付き合っているはずなのに傍目は変わらず仲の悪い二人に、周りは心配したりもするが、それを余所にそれなりに上手くいっていた。

そんなある日、布団の中でまったりしていた銀時に、

「今日は泊まってく」

土方は初めてそう言ってみた。

もう何度も二人で夜を過ごしてきたが、いつも仕事を理由に早々に切り上げていた土方。

今日は場所も万事屋だし明日は非番だし、それも良いかと思い切って言ってみたのに、

「え、泊まんの?」

銀時は驚いた声を上げた。

その声には不服とか拒絶が小さく含まれている気がして、喜んでくれるかと思った土方は気が付く。

そういえば、「まだいいじゃんんん」と引き留められることは毎回だったが、「泊まっていけば」と言われたことはなかった。

人の心の機微ばかり読んできた土方は、

「…迷惑だったか?だったら…」

とっさにそう切り替えしてみたが、銀時は慌てて表情を崩す。

「やだなぁ、んなわけないじゃんっ。珍しいこと言い出すからびっくりしただけですぅ」

そう言って笑ったときは、いつのも嬉しそうな顔になっていた。

「初めての“夜明けのコーヒー”じゃん。コーヒーないけど、味噌汁作ってやるからさ」

土方をぎゅっと抱き締めながらそうはしゃぐ銀時に、さっきのはやっぱり気のせいだったのかと思うことにした。

それが覆されたのは一月ほど経った頃だった。

あの日から万事屋に泊まっていくことが増えた土方は、ある夜、隣で寝ていた銀時が居なくなっていることに気が付く。

そのときは厠にでも行ってるのかと思ったのだがそんなことが何度もあり、銀時を探して居間へ行ってみると、定席の椅子に深く腰掛け静かに寝息をたてている銀時が居た。

なんでこんなところで寝てんだ?いつも布団を抜け出してここに居たのか?もしかして……

見つめる土方の気配に気付いたのか、銀時が目を覚まし、慌てて言い訳をする。

「ひ、土方っ。あの、その、ちょっと眠れなくてジャンプ読んでたらいつのまにか眠っちゃっただけで……」

そんな言い訳をするほうが余計に後ろめたいことがあるように聞えてしまうものだ。

土方が辛そうな表情を崩さないのを見て、銀時はすぐに観念する。土方相手にどう誤魔化しても通用しそうにない。

「悪い。なんつーか……隣に人が居ると寝れねーんだよね」

「…俺が…」

「違う。誰でもダメなんだ。なんか……落ち着かなくて……」

いつでも誰にでも割と気さくに接する銀時は、そうやって周りの人を惹きつけ楽しそうにやっているように見える。

だが徒ならぬ剣の腕前を持つためには、笑って話せないような過去を持っているはずで、それが銀時の心に暗い影を落とすのだろう。

それを話してもらえないことも、受け入れられていないことも、理解はできる。

理解はできるが割り切れなくて、土方は笑って言ってやることができそうになかった。

「……分かった。だったら無理しねーでも、もう……」

「だから、違うからっ!」

早急な結論を出そうとする土方に、銀時は言葉を遮って申し訳なさそうなバツが悪そうな顔をして言った。

「つまりな、せっかく土方と付き合えるようになったんだから……このままじゃ嫌だなぁって思ってさ……リ…リハビリ? してたら、いつか平気になるんじゃねーかと思って…試してたんだよ……」

照れながらそう言った銀時の言葉を信じるなら、眠りにつく前、布団の中で幸せそうに土方を抱き締める銀時は嘘じゃないことになる。

朝起きて、土方の好きなものばかりテーブルに並べて嬉しそうに朝食をとる銀時は、自分をちゃんと好きでいてくれることになる。

土方はその嬉しいことばかりを信じることにした。

「…分かった。リハビリ、付き合う」

土方がそう答えると、銀時は笑って土方の手を引き布団に潜り込むと、さっそくリハビリを開始する。

抱き締める腕に応えて、土方も目を閉じた。




あれから二月。

土方は目前にある銀時の寝顔をじっと見つめた。フリかな、と思って前髪にそっと触れてみたが起きない。

静かな寝息をたてる銀時に、嬉しくて抱き締めたくなるのを我慢して、起さないように少しだけ身体を寄せた。



 おわり




もっと細かく銀さんの心理的なものを書いたほうがいいのかもしれないんですが、
面倒くさいのでふわっと感じてください(笑)
書きたかったのは最後のシーンだけなんです。
……や、正直に言えば某作家さんの某作品の最後……
アレを見たときに「かわいぃぃぃぃっ!!」となったので…それをね……書きたかったの。
すみません。私のは全然駄作なんですが……二人が幸せならいいの(笑)


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