学園設定(補完)

□逆3Z−その2
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「言ったよね、大人になったらもう一回言うって。俺と、結婚してください」

真剣に言ったプロポーズに、土方は失礼にも吹き出した。

「ぶはっ。てめー、育っても法律は覚えてねーのか」

「だから、結婚できる国だってありますぅ。日本だって証明書とか発行してくれるとこもあるじゃん」

「……なんで俺だよ」

あの時と同じ質問をする土方に、銀時は掴んだ手に目を落としてから答える。

「先生が言ったように、本当に“気のせい”かって考えた。周りの女子が可愛く見えるときが来るのかって様子見てたのに……誰も先生以上になってくれなかったんですけど」

銀時は、無かったことにされそうなのが悔しくて“覚えてろ”なんて言ったけれど、会わなくなって時間が経つうちに、諦めたほうが土方のためなんじゃないかと思った。

なのに、

「ずっとずっと先生が消えてくんなくて……忘れられなくて……そしたらこの学校にゴリ先生が居るし、向こうは気付かなかったから俺も黙ってたけど、いつか……先生にも会えるかもって思ってたら、先生まで赴任してくるし」

桜の花びらが舞い散る校庭に、ずっとずっと消えなくて忘れられなかった姿を見たとき、心臓が止まったような気持ちになる。

すぐにでも声をかけたかったけれど拒絶されるのが怖くて躊躇っていたら、全然気付いてもらえなくてがっかりする反面ホッとした。

これでしばらく見つめていられる。銀時の前では警戒しているせいで表情が硬いが、こっそり覗いているときに見せる笑顔は昔のまま綺麗で嬉しくて、なので「どういうつもりだ」と問い詰められたとき改めて告白してしまった。

想像通り、嫌がられたけれど。

「ずっと好きだって、変わらないって言っただろ。だから俺のことちゃんと考えてくんない?」

再会して告白されてからの銀時は、断っても断っても付き纏い、なぜかいつも自信有り気だったのに、改まって告白した今は少し寂しそうだった。

改まったからこそ断られるのが怖いのかもしれない。

あの頃のことを思い出してみれば、銀時は本当のことしか言ってなかった。一目惚れ、気は長いほう、嘘つき。

思い出さない土方に面白がってたとはいえ土方への想いは本当で、8年間ずっと自分だけを好きだったと分かったら正直胸にずしんとくる。

が、それとこれとは話が別だ。

「断る」

「ええぇぇぇ!?ここは“うん”っていう流れじゃね!?約束したじゃん!」

「俺はしてねー」

「8年間ずっと好きだった俺の純情な気持ちはぁ!?」

「俺には関係ねー。それじゃ、まだ部活あるから」

表情も変えず素っ気無くそう言って道場に戻っていく土方を、今日ばかりは引くわけに行かずに追いかけてくる銀時。

「ちゃんと思い出したんだろ?だったら、もうちょっと考えてくれてもよくね?」

「思い出したけど、昔も今も返事は同じだ」

「なんでですかぁ!?先生のことこんなに好きなのは俺ぐら……」

ぎゃーぎゃーと騒ぎながら道場に入ってくる2人を呆然と見つめる部員たちの中、土方は何かを思いついたように足を止め、追いかけてくる銀時に振り返った。


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