学園設定(補完)

□逆3Z−その2
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それから銀時による土方へのストーカー行為は無くなった。

諦めたわけではなく、告白してしまったことにより開き直ったので堂々と付き纏うようになっただけだ。

「ここまで何か質問があるか?」

「はーい、先生はGWは何してんですかぁ」

「……坂田、俺が聞いたのは“授業に対する質問”だ」

「いっけね、へてぺろっ。で?何してんですか?」

「教えない。他にないか?ないな、じゃあ次……」

けんもほろろな態度の土方に、拗ねる銀時、笑うクラスメイト。

銀時のアプローチ自体は迷惑でしかなかったが、その存在は授業の雰囲気を良くしているような気はした。

授業をするのがあんなに憂鬱だったこのクラスが、不快感を銀時に集中することによって周りの生徒がかわいく見えさえする。

『坂田にとっては嬉しくない話だろうがな』

そう思うとついつい笑ってしまう土方に、職員室の向かいの席に座っていた近藤が、

「なんだ、トシ。楽しそうだなぁ、なんか良いことあったのか?」

からかうようにそう言った。

「べ、別に何もねーよっ」

「そうかぁ?ま、赴任早々忙しくさせちまって疲れてんのかと心配してたけど、生徒と仲良くしるみてーで良かったよ」

何か訳知り顔で納得する近藤に、土方はぎょっとさせられる。

「な、仲良くって……」

「“土方先生と仲良くなりたいから色々教えてくれ”って生徒が来たぞ」

「!!? さ、坂田かっ!?」

「あ?そうだけど……」

「何してくれてんだぁぁ!!」

「ええぇぇ、ちょ、トシぃぃ?」

ついつい近藤に怒鳴ってしまったが、諸悪の根源は別にいる。土方は職員室を飛び出した。

近藤は高校の同級生でずっと付き合いがあり、同じく教師になった。今年たまたま同じ学校に赴任してきたのだが、それをどこからか聞き付けたのだろう。

その近藤から、“先生と仲良くなりたい可愛い生徒”を装い情報を得ようなんて、姑息な手だ。

放課後なのでまだ居るならクラスかと思い、すれ違う生徒があいさつもできない形相で3年Z組まで急ぐ。

予想は当たったが、そこには坂田以外にも生徒が居て一緒に話をしていた。

「今日は土方の追っかけしねーのか?」

「部活休みだもんよ」

「剣道部らしいな。指導なんてできるのか?」

「すげー強いんだぞ」

「そんな風に見えんがのう。優男風じゃき」

「なのに何を手こずってんだ。もっとこう強引に迫ってみたらいいんじゃねーのか」

友人が同性の教師に片想いしているを心配しているわけではなく、完全に面白がっている高杉たちもまとめて説教してやろうかと思った土方だったが、

「無理だからっ、“鬼の副長”って呼ばれてたんだぞ。怒らせると怖いんですぅ」

そう怯えるように言った銀時に、教室に乗り込もうとした体は止まる。

子供の頃からずっと剣道をやってきて高校生の時には副長を務め、後輩たちからは“鬼の副長”なんて呼ばれたこともあったが、なぜ銀時がそれを知っているんだろう。

近藤から仕入れたからだとも思えるが、あの言い方からは“知っていた”ような感じがした。

何かが胸に引っかかる。

そんなことを考えていたら怒った勢いで乗り込んでいくタイミングを逃してしまい、

「それをフラれた時の言い訳にしてんだろーが」

「ふ、フラれねーもんんんん」

「その自信はどこから来るのだ。全然相手にされてないように見えるぞ」

「照れ隠しだし。ツンデレなだけだし」

「“ツンデレ鬼の副長”……なんかときめく響きじゃのう」

「あれは俺んだからっ!!手ぇ出したら絶交だぞコノヤロー」

「んな物好きはお前だけだ」

勝手なことをほざいている四人を放置し教室を離れた。

何か思い出せそうで思い出せない。

そんなモヤモヤを抱えたせいか、その日、懐かしい夢を見た。



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