学園設定(補完)
□逆3Z−その2
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#25
作成:2016/04/15
春の暖かな日差しの“午後”、
「おっはようございま〜す」
明るく挨拶しながら教室へ入ってきた銀髪天パーの男子生徒に、クラスのあちこちから小さく笑いが起きる。
真っ直ぐ自分の席に向かうと、それを囲むように座っていたツレ達からの冷たい言葉。
「銀時、貴様の時計、壊れてるぞ」
「真面目に言わないでくんない? 間違えたわけじゃないから。純粋な寝坊だから」
「昼に登校してくるやつを“寝坊”とは言わんな」
「金時は豪胆じゃき」
「ババアの手伝いしてっから起きれなくてさぁ」
アゴが外れるんじゃないかと思うぐらい大きな欠伸をする銀時に、長い付き合いなので事情は分かってるけどな、という顔をする。
「このままじゃ留年だな」
「いや、まだ4月……というか、新学期始まって1週間だから。まだ大丈夫だから」
「そう言って油断して、去年はギリギリ……というか、足りない分を大量レポートで埋めるハメになっただろう」
「あれは大変だったなぁ」
「埋めたのは俺たちだろーがっ!!今年は手伝わねーからなっ!!」
「あっはっはっはっ、今年はおんしも危ないんじゃなかか?」
「てめーにだけは言われたくねぇぇぇ、バカ本!!」
「おいおい、おめーら、昼休みに騒ぐなよ。クラスのみなさんのご迷惑になるだろうが」
「発端はてめーだぁぁぁぁぁ!!」
「“……と、楽しい仲間たちに囲まれて幸せな銀時だった”」
「気持ち悪いナレーションを入れるな」
「あっはっはっは」
一通り騒いで飽きたのか全員がそれぞれにしたいことをし始めると、銀時は自分の席に座り外を眺める。
ソメイヨシノは終わってしまったが、窓から見える校庭の端っこの大きな八重桜は満開だった。
散る花びらが風に舞う様子をぼんやり見つめていたら、その中を校舎に向かって横切っていく者がいた。
スーツを着てきっちりネクタイを締めた若い男。
ぼんやりした意識がその姿を認識した途端ハッキリし、校舎へ消えて行こうとする姿を追いかけて窓を開けると身を乗り出した。
「おおっ? どうしたんじゃ、金時ぃ」
「なんだ、身投げか?」
急に動き出した銀時に驚く高杉たちに問いかける。
「アイツ、誰っ!?」
「誰だよ」
「アイツ……ってもう見えねー! えっと、黒い短髪で、スーツ着てたから教師だろうけど見たことないヤツで、キレイな顔した……」
「あー、今年赴任してきた……あ?……アイツ、名前なんだった?」
「“土方”だ。というか、俺たちの数学を受け持ってるのに何故知らんのだ」
「まじでかっ!!」
「数学はなぜか午前中に集中しとるきに、遅刻ばっかりの金時はまだ出とらんのじゃなかか」
「……今年は数学の単位が足りなくて留年決定だな」
呆れる仲間たちに銀時は熱く宣言する。
「大丈夫ですぅぅ。もう数学は絶対に遅刻しねーからっ」
「……どうしたんだ、いきなり」
「運命、かな」
にやにやと不気味な笑顔を浮かべる銀時に、ドン引きする仲間たちだった。
つづく..