学園設定(補完)

□逆3Z−その2
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#22

作成:2016/03/24




卒業式から一転、教室はにぎやかなパーティー会場になっていた。

高校生の、しかも校内のことなので、飾り付けを豪華にしただけだったが、それも手作りのようだった。

仲の良かったクラスの生徒達の、最後の共同作業かと思えばほんの少し切ない。

ウーロン茶を飲みながらしんみりしている土方に、生徒がワラワラと集まってくる。

「先生〜、元気で頑張れよ〜」

「お前らもな」

「先生〜、俺、卒業したくね〜よ〜」

「……だったら卒業止めるか?校長に言ってやるぞ」

「卒業ばんざーいっ!」

コップの中身は同じウーロン茶のはずなのに、酔ってるんじゃないか思えるほど陽気な生徒たちに溜め息をつく。

そのとき、視線を感じてそちらを向くと、銀時が目を輝かせていた。

土方は眉間にシワを寄せ“冗談だよっ”と目で訴えると、“ちぇー”と拗ねた顔をした。

『先生、俺卒業したくない。もっと一緒にいたいよ』

本気でそんなことを言う銀時を、なんとか説得してようやくこの日を迎えたのだ。

冗談じゃない、早く卒業してくれないと困る。

生徒である銀時と付き合って二年以上、後ろめたい思いを続けるのはもうごめんだった。

だからといって公にできる関係ではないけれど、卒業してくれれば少なくとも一緒に出歩くことはできる。

学校の外でも中でも人目を気にして“関係のない”フリを続けていくのは、覚悟の上でも寂しいものだった。

物思いに耽る土方だったが、教室は更に盛り上がり、

「王様ゲームしようぜ〜!」

なんてことになっていた。

椅子を円形に並べて用意してあった割り箸製のくじの束を取り出す。その本数からみて全員でやる気らしい。

王様ゲームをやるにはちょっと人数が多すぎるんじゃないだろうか……と思いつつ、楽しそうな生徒たちを見ていた土方の前にもくじが差し出された。

「……俺も?」

「当然です!」

しぶしぶ一本抜き取る。“16”と書かれていた。

「王様だーれだっ?」

「はーい!私〜」

そう言って銀時の隣に座っていた女生徒が立ち上がり、教壇に居た俺のところまでやってきて、

「先生、どいてっ。ここは王様の席だから、あっち座ってっ」

土方を追い出すと教壇を“上座”に見立てて、ちょっと豪華に飾りつけした椅子に座る。

“ええ〜”と思いながら、嬉しそうな顔をしている銀時の隣に座った。こんな些細なことが今更ながらに恥ずかしい。

「じゃあ、“5”が付く人は隣の人と手を繋ぐ!」

自分には関係ないと思った土方だったが、チラリと隣を見ると銀時が持っていたのは15番のくじ。

“ええええ〜”と思いながら、嬉しそうな顔をしている銀時の差し出した手を握る。こんな些細なことが今更ながらに超恥ずかしい。


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