学園設定(補完)
□逆3Z−その2
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#19
作成:2016/02/11
ぽかぽか陽気の教室で、外を眺めながら銀時は“思い出し笑い”ならぬ“想像笑い”を漏らしていた。
鞄の中にはチョコレート。バレンタインデーを控えた金曜日だったが、貰ったものではなく自分で準備したもの。
それを好きな人に渡したときのことを想像すると笑ってしまう。
ずっと好きで口説き続けている教師の土方。
あいにく全然相手にはされていないが長い時間をかけて頑張ったかいがあり、急に押しかけた銀時を追い出しもせず話を聞いてくれるぐらいになった。
だからバレンタインデーにチョコなんてベタな方法だけれど、本気で告白したら呆れた顔をしながら笑ってくれるんじゃないかと思う。
告白して付き合ってもらうなんて思ってないから、せめて笑った顔が見たい。
それを想像してワクワクしている銀時の横で、クラスメイトが話している声が聞えてきた。
「あ、なに、そのチョコ。誰に渡すの」
「へへっ、土方先生に渡すんだ〜」
「マジで?あの堅物のどこがいいのっ」
「堅物じゃないですぅ、クールビューティーっていうのよっ。メガネの下はけっこうイケメンなんだから」
聞き耳を立てながら“そんなこと知ってる”と銀時は思った。
イケメンなのに野暮ったい眼鏡をかけてにこりともしないで面白みのない授業をする教師。そんな土方に目をつけている生徒は少なからずいるようだ。
別な男子生徒が口を出してきた。
「やめとけ、捨てられるぞ」
「ええっ、何ソレっ」
「先輩から聞いたんだけどな、アイツそういうモン、絶対受け取らねーってよ」
「そうなのっ?」
「直接渡せば拒否られ、職員室とかにコッソリ置いてけば他の教師に配られ、下駄箱に入れようもんなら“不衛生だ”って捨てちまうってよ」
「え〜〜」
聞きながら銀時は背中に嫌な汗が流れ出した。自分も“定番シチュエーション”な下駄箱に入れておこうかと思っていたのだ。
「……でもやりそうだよね〜。堅物だし」
銀時もそう思う。
「だからやるだけムダムダ」
「ちぇ〜〜」
彼女たちが会話を終了したあと、さっきまでのウキウキが嘘のように銀時は一人でしょんぼりと肩を落とした。
土方の笑顔を見るという夢は叶いそうにない。
と思いつつ、諦めきれなかった銀時は、放課後こっそりと職員用の下駄箱にやってきた。
土方のプレートが張られた下駄箱を見つめ、開けて、チョコを入れてから、物陰にこっそりと隠れる。
チョコを捨てられてしまったときに、可哀想なので回収しようと思ってのことだ。
いつもの時間に帰宅しようやってきた土方に、胸がきゅんとときめく。
今日は土方の授業も教科室に会いにも行かなかったので全然顔を見れなかったから、よけいに嬉しくなった。
が、下駄箱を開けて中に入っているモノを目に留めた途端、険しく不機嫌になった土方にショックを受ける。
『捨てられるうぅぅ!!』
しかし土方はチョコを手に取り、箱に書かれたメッセージを見た後、フッと笑顔を浮かべた。
“土方せんせい、らぁぁぶ!!by銀時”と汚い字で書かれたチョコを鞄に入れ、土方はそのまま靴を履き替えて学校を出て行った。
残された銀時は……廊下で悶絶。
『何アレ、ごっさ可愛いんですけどぉぉおお!!』
横顔だったが初めてはっきり見た土方の笑顔。
『もしかして俺のチョコ!?俺のチョコが嬉しかったの!?』
捨てもせず笑顔付きで持ち帰ってくれた土方に、銀時は嬉しさと恥ずかしさと期待に胸を膨らませるのだった。
オチ。
「あ?チョコを捨てた?んなことするわけねーだろっ」
「……ですよねー……」
どうやら“捨てた”はガセだったようだ。
じゃあ自分のチョコを持ち帰ったのにも深い意味はなかったのだとガッカリする銀時を見ながら、
『自分で食べたのは始めてだったけどな』
と思いながら土方は小さく笑った。
おわり
この先生は例の長編とは別の土方先生です。
相変わらずパッと浮かんだ話を書いてるだけなので、あいまいな部分が多くてすみません。
パッと浮かんだだけに……コメントすることがないなぁ(笑)