学園設定(補完)

□3Z−その2
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それから、ビン缶のゴミはアパートの一角に置ける場所があるので捨てるために外へ出て、戻ってきてからお妙が言っていた“騒がしくしても許してもらえる先手”が何なのか知った。

銀八の部屋のドアには“独身で彼女もいない寂しい高校教師の誕生日を祝うために生徒が集まっています。騒がしくしてごめんなさい”と可愛いイラスト付きで描かれたポスターが貼ってあった。

「……あいつら……」

バリバリとそれを剥がしていると階段を上がってくる足音が聞え、現れた土方が銀八の姿を見てちょっと驚いた顔をする。

「どうした、忘れ物か?」

「……はい」

「……どうぞ」

ドアを開けて銀八が先に入って行くと、土方が続いて中に入りドアを閉める。

前を歩く銀八に早足で追いつくと、背中から前に手を伸ばしてぎゅっと抱き締めた。銀八の体温を感じながら、申し訳なさそうに呟く。

「……ごめん、あいつら止められなくて」

銀八は、早朝部屋に来たときもみんなが次から次へと出入りするときも、始終しょんぼり気味だった土方を思い浮かべ、腰に回っている土方の手を掴みながら笑った。

「メールで言ってたプレゼントが“アレ”なのかと思った」

「違う。一人で来るつもりだったのに、今日は部活休むって昨日近藤さんに言ったら、総悟が急に先生を祝おうとか言い出して、みんなに召集かけちまって…」

銀八と付き合ってることを誰にも教えてないのに、総悟は何か感づいていて俺に対しての当て付けで企画したんだと土方は思っている。

突然の企画だったにもかかわらず、クラスのほとんどが祝いに来てくれたのは喜ばしいことかもしれない。そのおかげで土方は1日塞ぎっぱなしだったのだが。

「それで?プレゼントは何くれるんだ?」

空っぽだった箱。土方から受け取ったそれに、入らない、入りきらないようなものをくれる、という意味だと分かっていた。

「………」

土方が答えないので、銀八はニマニマしながら、

「“プレゼントはあ・た・し”がお前からだったら嬉しいんだけどな」

猿飛のセリフを拝借して冗談交じりにそう言ってみたのだが、土方は何も言わないかわりに抱き締める腕に力を込めた。視線を下に落とすと、掴んでいた腕が赤く染まっている。

『まじでか』

銀八は思わず心でそう呟いてしまう。

付き合うようになってから遅かれ早かれと思ってアプローチはしてみたものの、決断できないでいる土方に、仕方ないし気長に待つとしようと思っていた。

それがこんなに早く、男ならちょっとは憧れるシチュエーションで、可愛くプレゼントして貰えるなんて。

きっと真っ赤になってるはずの顔も見てやろうと抱き付いている腕を剥がそうとするが、高校生男子(剣道部)が必死に抵抗するので剥がれなかった。

「土方くん、離してくんない」

「いやです」

「これじゃあ何もできないんだけど?」

「………」

ようやく腕が解けたので振り返ると、下を向いたままの土方はやっぱり隅から隅まで真っ赤だ。

たぶんどんな顔をしていいのか何を言えばいいのか、いっぱいいっぱいになっている可愛い恋人を正面から抱き締めてやった。

しばらく緊張してガチガチだった土方も、銀八の背中に腕を回して抱き締める。

今日一番に、二人きりで言いたかった言葉をやっと言える。

「……先生、誕生日おめでとう……」

「…ありがとう」

今日は1日、そして明日からもずっと、欲しいものが全部手に入って幸せだと思う銀八だった。



おわり




土方の出番最後だけですみません(笑)
ちゅーぐらいさせようとかと思ってたのに、なんか終わっちゃったな……不思議。
はっきり明記しませんでしたが、土方は今日は始めてのお泊りですよ、うん。
こんなもんです、私の3Zは(笑)


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