学園設定(補完)
□同級生−その1
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昼休み、定席である中庭のベンチで坂田銀時は横になって物思いに耽っていた。
『初めて言葉を交わしたこの中庭で、またあの子が現れないかと心待ちにするのだった………なんつって』
と、勝手なモノローグを思い浮かべたりしてみる。
“また”どころか、土方との付き合いは続いていた。もちろん“友達”としてだ。
月曜と木曜には、差し入れの横流しに来てくれるし、今日は水曜だから明日には会える。
剣道の部活動に熱心で忙しいようだったが、何度か遊びに行ったりもした。もちろん“友達”としてだ(二回目)。
当初から土方への想いを自覚しているのだから、何もしなかったわけではない。
ちゃんと誕生日には手作りのプレゼントなんかもあげたのだが……。
“あれ手作りで大変だったろ。布地も良いやつだって叔母さんが言ってた”
そう言った土方の様子が少し困ったような様子だったので、思わず笑い飛ばしてしまった。
“大丈夫ですぅ。超特売の安い布だったし、あんな柄だから売れ残りじゃね?ぷぷぷっ”
“マヨをバカにすんなぁぁ!”
“作るのだって型抜いてミシンでだーって縫うだけなんだから簡単なんだって。気にすんなよっ”
“……そっか”
『んなわけねぇだろうがぁぁああ!!誕生日だから思い切りウケ狙えるもの作ろうと思って、あれ見つけたときは大爆笑だったけどすっげー高い布だったから、あのあと激貧だったしっ!!型抜いて縫うだけは確かだけど、今まで作った中で一番緊張しながら時間かけて丁寧に作ったしっ!!』
何度も反芻しては悶絶し、
『でもさ、あの“……そっか”の時はちょっと寂しそうな顔だったんじゃね?もしかして“お前のために心をこめて作ったんだよ”ぐらい言ったほうが良かったんじゃね?』
と悩んでみたり。
せっかく知り合いになれたからもっと歩み寄ってみたくて誕生日プレゼントを贈ったのに、自分で否定してしまったせいで“本当は嫌がっていたらどうしよう”と怖くなってしまった。
幸い、土方はあれからも普通に付き合ってくれている。もちろん“友達”としてだ(三回目)。
自分で“友達”と念を押しすぎて滅入っている銀時の居る中庭に足音が近づいて来る。
「坂田っ」
頭の中をいっぱいにしていた当人の声が聞こえて、銀時は一瞬宙に浮いたんじゃないかと思うぐらい驚いた。
目を開けて身体を起すと、土方が息を切らして駆け寄って来たところだった。
「ひ、土方?」
「……あの……お前に聞きたいことが…あるんだけど……」
土方はモジモジしながら顔を赤くして銀時を見つめる。
『ええぇぇぇえ!?何、何ですか、もしかしてなんかのフラグが立っちゃったりしたんですか、コレェェ』
と内心興奮する銀時を他所に、土方は期待ハズレなことを聞いてくれた。
「結婚記念日のお祝いに、叔父さんにひざかけ作りたいんだけど俺でも作れるかな?」
銀時の“内心”は一気にクールダウン。
『だよね、そういうオチだよね。んなことでテレちゃって可愛いなコノヤロー』
がっかりしたのを顔に出さないように笑ってやる。
「土方が?お前不器用そうだしなぁ(笑)」
「う……小学校で雑巾ぐらいしか縫ったことねぇけど………無理かな?」
初めて見るしょんぼり顔に“内心”はまたヒートアップするが、平常心をキープしつつ答えてやる。
どうやら本気らしいし、せっかく頼ってくれたのだから無理でもなんとかしてやりたい。
「ひざかけ、ねぇ。暖かい布買ってきて縫うだけなら簡単だけど……それじゃ手作りとしてはイマイチだよなぁ」
「できれば……お前がやってたみたいな……毛糸で……」
「編むの?」
「む、難しいかっ!?」
「いや……難しくはねーけど……」
実際長方形に編めばいいだけなので難しいことはないが、ひざかけとなると初心者が挑戦するにはたいぶ大きい。
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